2019 Fiscal Year Annual Research Report
Stereodivergent Synthesis Enabled by Hybrid Catalysis
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
17H06446
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 貴史 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 教授 (80271708)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 / オニウム塩 / イオン対 / イオン反応 / ラジカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
光レドックス触媒とブレンステッド塩基触媒のハイブリッドシステムを用いたシリルエノールエーテルのアリル位C-Hアルキル化反応の幅広い適用性を明示した。開発した反応はシリルエノールエーテルのケイ素上の置換基にはほとんど依存せず、ラジカル受容体であるオレフィンも含めて広範な基質が適用可能であり、複雑な天然物誘導体の位置選択的な官能基化にも応用できる。また、基質適用範囲を実験的に検証すると同時に、計算化学的手法による基質の構造と収率の相関解明にも取り組み、発生するアリルラジカルのアリル位のスピン密度の大きさが付加段階の活性化エネルギーに影響することを突き止めた。本反応で得られた生成物はエノールエーテル部位を残したままであり、引き続くα-位でのイオン反応を行うことで高度に官能基化されたカルボニル化合物へと変換できることも実証した。 また、光レドックス触媒とのハイブリッドシステムにより水素原子移動(HAT)反応の優れた触媒として機能する双性イオン型トリアゾリウムアミデートを用いたユニークな反応開発を行った。具体的には、N-Bocピロリジンとα-フェニルアクリレートを基質とするラジカル付加反応が高ジアステレオ選択的に進行することを発見した。この結果は、HATの過程を経て生じるアミデートの共役酸がプロトン供与触媒として機能し、生成物の相対立体化学を決定する段階に関与するためであると推察される。すなわちアミデートがHAT以外の素過程にも関与し得る多機能型の触媒であることを示唆する重要な知見が得られたと考えている。 その他に、4種の触媒で構成されるハイブリッドシステムを用いたL-アミノ酸誘導体の触媒的立体反転法の開発を達成した。また、新しいハイブリッド触媒システムの一翼を担い得る新規触媒として、イミンの光触媒機能やキラルボレートイオンの不斉触媒機能を創出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄記載の通り、シリルエノールエーテルのアリル位C-H変換反応や、トリアゾリウムアミデートを用いたジアステレオ選択的HAT反応、アミノ酸誘導体の触媒的立体反転法など、ハイブリッド触媒によって初めて実現可能な反応開発をいくつか達成した。トリアゾリウムアミデートについては、構造多様性に富みラジカル触媒反応の制御を指向した構造修飾が可能である。この観点から、先例のない位置選択的HAT反応の実現を担い得る新しいアミデート触媒の開発が順調に進んでいる。 また、前年度の研究で、一つの炭素求核剤とニ種類の求電子剤が、ワンポットで、ある決まった順序で連続的に結合形成を起こす交差求電子剤型三成分反応を発見していたが、光学活性1,2,3-トリアゾリウム塩を触媒とすることで、高いレベルの立体制御を達成し、成果としてまとめる段階まで進んでいる。今後の研究で、キラル有機分子触媒-キラル遷移金属錯体等のハイブリッド触媒システムを採用することで、本不斉触媒反応を立体分岐型不斉合成に展開できると考えている。 さらに、代表者らがこれまでに開発したいくつかのイオン性分子触媒と光レドックス触媒のハイブリッド化により、高度な立体制御を伴うラジカル反応を複数開発している。いずれの反応もハイブリッド触媒システムによって初めて実現可能な不斉触媒反応という点で、本領域研究に大きく貢献する成果である。 以上、立体分岐の実現には未だ課題を残しているものの、ハイブリッドシステムを担う新規有機分子触媒の創製や反応開発に関して大きな成果が得られており、計画全体としては着実に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
トリアゾリウムアミデートを用いたハイブリッド触媒システムの開発については、HAT反応の位置制御を中心的課題とし、この達成に資する新規分子の設計・開発を推し進める。すでに位置制御の端緒となる実験結果が得られており、新規触媒の基本骨格として有望な構造を見出している状況にある。今後は、触媒の構造修飾を行い、構造と位置選択性の相関を明らかにしていくことで、先例のない選択的HAT触媒反応を実現すると同時に、ラジカル反応の位置を制御するための指導原理のひとつを確立したい。また、キラルなトリアゾリウムアミデートを用いた不斉水素原子移動反応に関する領域内共同研究を引き続き推進する。 交差求電子剤型三成分反応については、適用性の拡大および立体分岐の実現を指向し、金属触媒によって活性化可能な求電子剤を用いた反応を検討する。 さらに、光レドックス触媒とイオン性キラル有機分子触媒によるラジカル反応の立体制御法の開発を強力に展開する。代表者らが独自に開発したキラルカチオンおよびキラルアニオンの豊富なライブラリーを活用することで、ラジカル反応の立体化学を精密に制御するための新しい方法論の確立を目指す。
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Research Products
(26 results)