2020 Fiscal Year Annual Research Report
強塩基ハイブリッド触媒系の開発及び高立体選択的分子骨格構築反応への展開
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
17H06448
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 恭弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90334341)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 強塩基 / 触媒 / 不斉合成 / ハイブリッド / 固相塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
構造が単純で入手容易な原料を用いて、医薬品等の高付加価値な有機分子を短工程で合成するための方法論の開発は、合成過程で生じる廃棄物の低減化や省エネルギー化につながるため、環境調和型有機合成を実現する上で最も期待されている研究の一つである。そこで本研究では、強塩基触媒を金属錯体触媒や有機触媒等の他触媒、または反応系内で生じる新たな化学種等と組み合わせたハイブリッド触媒系を構築し、それを用いる効率的有機分子骨格構築反応の開拓を行う。具体的には、①強塩基触媒と金属錯体触媒のハイブリッド触媒系の創出および触媒的不斉合成反応への適用、②強塩基触媒と有機触媒のハイブリッド触媒系の創出 および触媒的不斉合成反応への適用、③固相強塩基触媒の開発および他触媒とのハイブリッド触媒系の構築、の研究を推進することにより、安定で入手容易な有機分子と反応性の乏しい求電子剤との反応を高度な立体制御を行いつつ達成する方法の開発を目標としている。本年度も上記の研究を継続した。①の研究では、入手容易な低酸性原料である単純アミドの触媒的不斉Mannich反応の開発を行い、キラルな金属塩であるキラルビスオキサゾリンのカリウム塩とカリウム強塩基とのハイブリッド触媒系が、様々なイミンとアミドやエステルとの反応を高エナンチオ選択的に進行させることを見いだした。またその触媒構造についても新たな知見を得ることができた。②の研究では、塩基触媒と有機光触媒とのハイブリッド触媒系を用いる反応で適用可能な原料の拡大を志向し、その予備的検討としてケトンのケイ素エノラートとアルケン類との有機光触媒を用いる反応の検討を行い、目的の反応が高収率で進行することを明らかにした。③の研究では、キラルビスオキサゾリンのカリウム塩の固相担体への固定化を行い、不均一系での強塩基触媒反応において高いエナンチオ選択性が発現することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不斉強塩基触媒系の構築において、キラルビスオキサゾリンのカリウム塩とカリウム強塩基とをハイブリッドすることによって高度な不斉空間を構築できることを見いだし、様々な原料との反応に適用できることを明らかにした。また、その触媒構造に関する知見は、新たなハイブリッド触媒系のデザインに繋がることが期待される。また、有機光触媒と強塩基触媒のハイブリッド触媒系開発において、新たな反応への展開の道筋が見えたことや、固相不斉強塩基触媒の構築について一定の前進があったことから、研究は順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
金属強塩基触媒と不斉金属錯体との強塩基ハイブリッド触媒系の開発において、新たなハイブリッド触媒系の開発に重点をおいた検討を行う。特に、用いる金属種や不斉配位子を変更することにより触媒機能の拡張を図る。一方で、有機光触媒と強塩基触媒のハイブリッド触媒系の開発では、低酸性原料の塩基による触媒的活性化と光触媒反応のハイブリッド化の検討を継続し、反応性の乏しい求電子剤との触媒反応の実現を目指す。また、固定化したキラルビスオキサゾリンのカリウム塩と固体強塩基を用いる連続フロー不斉反応の実現を目指す。
|