Planned Research
水惑星の水-岩石系に存在する自由エネルギーや化学ポテンシャルの勾配は生命を生み出す原動力である。そのため、そのエネルギー勾配を支配する水環境の物理化学的条件を復元することは、水惑星と生命の関係を探るうえで本質的課題である。この物理化学条件は、異なる種類の水-岩石反応を引き起こすので、当時の水環境の情報は岩石の鉱物組み合わせや元素濃度組成、同位体比、元素の化学種に記録されていることが期待される。本研究課題では、水環境の情報を的確に反映する分子地球化学プロキシを開発するとともに、惑星物質から必要な化学情報を引き出してプロキシによる環境推定ができる分析体制を確立することを目的とする。平成29年度はX線顕微鏡専用ビームラインの構築と、水惑星の表層環境推定のためのプロキシ開発を行った。(1)ビームライン構築: 高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPhoton Factory BL-19にX線顕微鏡への利用を目的としたビームラインを設置するため、ビームライン光源・分光の主要設備(アンジュレータ)の開発を進めた。(2)地球化学プロキシ開発: 準安定炭酸塩鉱物の鉱物組み合わせよりアルカリ塩水環境の水質を復元する手法 (Fukushi et al. 2017GCA)、スメクタイトの層間陽イオン組成を利用した水質復元法の開発、微量元素濃度比を用いた酸化還元状態プロキシ(Mo/W比など; Watanabe et al.2017Chem.Geol.)、微量元素同位体比による酸化還元状態プロキシ(Nakada et al.2017GCA)などの開発を行った。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
X線顕微鏡ビームライン・装置の整備および高度化において、当初計画からの変更はあったものの、次年度において十分にカバーできる程度の変更であった。プロキシ開発については、当初の計画通りに研究を行い、いくつかの成果を国際誌に報告することもできた。全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
平成30年度はX線顕微鏡専用ビームラインの構築、X線顕微鏡を利用した地球外物質の分析、水惑星の表層環境推定のためのプロキシ開発を行う前年度に引き続き、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPhoton Factory (PF) BL-19にX線顕微鏡への利用を目的としたビームラインを設置する。平成30年度内でのファーストライトの実現を目指す。X線顕微鏡を用いた地球外物質の分析を行う。特に、隕石に含まれる有機物に富むクラスト試料の分析を通し、これらの形成過程を明らかにするとともに、X線顕微鏡を用いた地球外物質の分析手法の確立・強地球外試料の分析データから水の物理化学情報(pH、酸化還元状態、塩濃度など)を推定する手法の開発を行う。具体的には、スメクタイトの層間に保持される陽イオンの性質を利用した水質復元、含水炭酸塩鉱物の生成条件を利用した水質復元、セリウム(Ce)安定同位体比を用いた酸化還元プロキシについて、脱溶媒試料導入条件の最適化による分析精度の向上と、モダンアナログのCe安定同位体比分析(中田)を行う。
All 2018 2017
All Journal Article (8 results) (of which Peer Reviewed: 7 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 1 results)
Origins of Life and Evolution of Biospheres
Volume: 48 Pages: 23-34
10.1007/s11084-017-9548-z
Microbes Environ.
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Geochim. Cosmochim. Acta
Volume: 218 Pages: 273-290
10.1016/j.gca.2017.09.019
Volume: 213 Pages: 457-474
10.1016/j.gca.2017.06.040
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Volume: 8 Pages: 15254
10.1038/ncomms15254