Research Abstract |
本年度は,「ITによるオープン・イノベーションの活性化」を目指して,以下の3つの課題に取り組んだ. (1)センサーネットワーク予防医療に関する研究,(2)地域社会のオープン・ソーシャル・イノベーションに関する研究,(3)パブリック・イノベーションの促進基盤に関する研究. 「センサーネットワーク予防医療に関する研究」では,福岡での実証実験を,研究フィールド,対象者,センサー種を拡大しながら継続している.本年度は,対象を糖尿病実患者に拡大すると共に,「情報薬」の現実世界への実装を初めて行い,収集した各種データの突合とそのマイニングによる評価を推進することで,全体サービスモデル像を示した.なお「情報薬」とは,「適正な情報をタイミングよく提供すると,情報は薬のようにヒトを健康にする」という概念のことである. 具体的には,ウェアラブル生体センサーと屋内の据え置きセンサーを用いて患者の生体データを取得し,センサーネットワークを用いてデータをデータセンターに集積し,糖尿病診療ガイドラインを展開したクリニカルパス(治療計画書)の上でそれらのデータに基づいた「情報薬」を患者へ提供している.その結果として治療の効率化・省力化を図ると同時に,匿名化したセンサーデータを遠隔グリッド・コンピュータ基盤に連結し,計算機クラスタにデータマイニングのジョブを投入するという一通りの処理プロセスを構築し,実験を行っている. さらに「電子行政」評価の方法論の研究も進め,公共領域の革新力を高めるための評価ツールの開発を進めている.また,情報自体だけではなく情報提供のあり方にも着目し,地域SNSなどの地域ソーシャル・メディアが,地域の社会革新への「内発的動機付け」効果をもつ情報の生成・共有に役立っている可能性を示した.
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