2010 Fiscal Year Annual Research Report
やわらかく小さなシステムの構造変化と非平衡ダイナミクス
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
18068005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 雅己 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40150263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 能宏 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60334249)
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Keywords | 非平衡定常状態 / 光ピンセット / マイクロレオロジー / ソフトマター / 非平衡枯渇力 |
Research Abstract |
本研究では統計力学の重要課題である非線形応答や非平衡ゆらぎが、やわらかで小さなシステムであるソフトマターで特に顕著に表れることに着目し、非平衡ゆらぎと非線形動力学を機軸として非平衡ソフトマターを体系的に理解することを目指して研究を行った。その結果H22年度は以下の成果を得た。(1)液晶乱流状態に表れるランダム界面のゆらぎの普遍性の発見:ランダムに成長する界面を記述する方程式としてKPZ方程式が知られているが、これまで定量的に比較できる実験が存在しなかった。我々は、液晶乱流中のトポロジカル欠陥が作る乱流の界面のスケーリング指数がKPZユニバーサリティ・クラスに一致するだけでなく、界面のゆらぎ分布が理論から予想されるランダム行列の最大固有値分布と一致することを初めて実証することに成功した。(2)細胞運動における3次元力測定:粘菌アメーバ細胞を用いて、単一細胞が発生する力の3次元分布の測定に成功した。その結果、垂直方向の力は水平方向のそれとほぼ等しい大きさであることを明らかにした。(3)変形を伴って運動する物体の運動論:変形を伴って運動するドメインを記述する方程式を導出し、分岐現象や複雑な運動形態の発生を明らかにした。(4)光をエネルギーに自己駆動するヤヌス粒子を実現:μmサイズの球形粒子の片側を金コートすることで、一様な光照射によって自己推進するミクロ粒子を実現した。また、ヤヌス粒子が作る局所的な温度勾配によって推進する自己熱泳動現象のメカニズムを明らかにした。(5)非平衡枯渇効果を利用した新しいマイクロマニピュレーション法の発見とそのメカニズムの解明:温度勾配中に熱泳動現象によって生じた高分子の定常的な濃度勾配が、より大きなコロイド粒子に及ぼす非平衡の枯渇力の存在を明らかにし、新たなマイクロマニピュレーション法としての応用の可能性を示した。
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