2008 Fiscal Year Annual Research Report
相分離過程における構造成長ダイナミクスと絡み合いダイナミクスのカップリング
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
18068009
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 宏 Kyoto University, 化学研究所, 教授 (90167164)
|
Keywords | 相溶性高分子ブレンド / 動的不均一性 / 終端緩和 / 温度-時間換算則 / ポリイソプレン / ポリ(p-t-ブチルスチレン) / 絡み合い / 主鎖骨格長 |
Research Abstract |
A型双極子を有するポリイソプレン(PI-20 ; 分子量M=2.0万)と、この双極子を持たないポリ(p-t-ブチルスチレン)(PtBS-16 ; M=1.6万)の相溶性ブレンド(PtBS重量分率=20, 50wt%)について誘電測定と粘弾性測定を行い、PI-20とPtBS-16の両方の運動を反映する粘弾性データのみならず、PI-20の運動だけを反映する誘電データについても温度-時間換算則が成立しないことを見いだした。この結果は、ブレンド中のPI-20の終端緩和がPtBS-16の緩和より速いためにPI-20の終端緩和の時間スケールではPtBS-16の濃度揺らぎが実効的に凍結され、PtBS-16が濃縮された領域および希薄な領域に存在する遅いPI-20鎖と速いPI-20鎖の緩和時間の活性化エネルギーが異なるために生じたことをWLF解析から明らかにした。また、ブレンド中とバルク系中のPtBS-16の挙動の比較から、等摩擦状態における粘弾性緩和時間はブレンド中の方が大きいことを見出した。この結果は、(擬似的)絡み合いに対応付けられた。すなわち、低分子量のPtBS-16鎖は、バルク状態では、そのランダムコイル中に十分な長さの主鎖骨格を持たないため、絡み合いを示さない。しかし、ブレンド中では、屈曲性のPI-20鎖が十分長い主鎖骨格を供給するため、PtBS-16はPI-20と(擬似的に)絡み合って大きな緩和時間を示したことが明らかとなった。この結果は、ホモポリマー系の絡み合いの概念の精密化をもたらす結果である。
|