2006 Fiscal Year Annual Research Report
二次元液晶における分子ダイナミクスの時空間変換の解明
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
18068017
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
多辺 由佳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50357480)
|
Keywords | 非平衡・非線形物理学 / ナノ構造物性 |
Research Abstract |
キラルな液晶分子で構成される液晶超薄膜に物質流を与えると,分子が集団で一方向に歳差運動を行う。この分子集団歳差運動の起源の解明を目的に、偏光解消蛍光測定およびMD計算を行った。実験においてもMD計算においても、物質流の下でマクロな一方向回転運動が生じている時、個々のキラル分子もまた長軸周りにわずかながら偏った回転をしていることが明らかになった。その偏りの差は、熱運動による回転の平均速さに比較してせいぜい1〜2パーセントと、非常に小さい。またMD計算によると,分子数を32個以下にすると長軸周り回転偏りが見られなくなることも確認された。これらの結果は,わずかな偏りを安定な運動に変換するために,液晶の分子間相互作用が必要不可欠であることを指示している。次年度は,微小な差を定量的に検出するための測定系の改善をおこなう。 さらに,集団歳差運動の特徴と物質流との関係を調べたところ,分子種によって回転挙動が全く異なることがわかった。例えば,水蒸気とエタノール蒸気をそれぞれ流した場合には,同じ液晶分子でも歳差の回転方向が逆転する。マクロな現象を説明するための古典モデルを使う限り,集団歳差を起こすための物質流は何でもよいはずなので,単なる衝突による運動量変換では説明のできない,分子構造に基づいた分子間相互作用が現象の根底にあることがわかった。流れる物質と液晶分子の間の相互作用と,生じるマクロな歳差運動の関係を系統的に明らかにすることは,次年度の課題である。
|