2010 Fiscal Year Annual Research Report
二次元液晶における分子ダイナミクスの時空間変換の解明
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
18068017
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
多辺 由佳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50357480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米谷 慎 産総研, ナノテクノロジー研究部門, 主任研究員 (30443237)
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Keywords | 非平衡・非線形物理学 / ナノ構造物性 |
Research Abstract |
本研究の初期目標は、二次元液晶を対象に、数ナノメートルサイズの分子のミクロな運動と、それらが構成する液晶のマクロダイナミクスとの関係を明らかにすることであった。この目標に対し、研究対象をキラル液晶単分子膜及び厚さ数十~数百ナノメートルの自己保持膜とし、液晶薄膜にポテンシャル勾配を与えた時の個々の分子運動と集団としての配向ダイナミクスを、光学実験と分子動力学計算によって追跡した。 具体的には、(1)ガス透過によるキラル液晶自己保持膜のダイナミクスの追跡、(2)スメクチック液晶薄膜でできたバブルのガス透過性測定と電場誘起ダイナミクス観察実験、(3)ポテンシャル勾配下におかれたキラル液晶分子の分子動力学計算、という3つのテーマに取り組み、分子運動とマクロな配向のダイナミクスの関係を追及した。結果として、分子動力学計算では、回転対称性の破れたマクロな運動のオリジンが、個々の分子の自転偏りにあることを示すことができ、また実験では、ガス透過時の液晶分子が、分子の捻じれ構造によるミクロトルクと螺旋によるマクロなトルクの2種の力を受けることを明らかにした。この結果から、液晶の集団回転のオリジンは、化学的な相互作用が顕わに関わる分子レベルのダイナミクスにあることがわかる。この見方に立つと、液晶分子の運動を引き起こすガス透過は、ガス分子の大きさだけでなく種類にも依存することになるので、これを確かめるため、液晶膜に対する様々な気体の透過率と液晶中の拡散定数を、液晶バブルの変形から定量的に求めた。その結果、溶質である気体分子が、溶媒である液晶分子よりも小さい場合、従来のマクロモデルとは大きくはずれた異常拡散が起きることがわかった。これは、生体膜をはじめとする柔らかい有機薄膜の選択的ガス透過性に共通するものである。
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