Research Abstract |
本研究は,高In組成InGaNおよび高A1組成A1GaNの輻射・非輻射再結合過程を時間・空間分解分光法によって解明し,局在中心などの発光局在中心の人為的導入やマクロ線欠陥やナノ点欠陥に起因した非発光中心を抑制するための知見を得ることを目標にしている。近年,InGaN系の発光ダイオード(LED)では,高電流駆動させたときに,注入キャリア数に対して発光強度が線形に増加しなくなるという「Droop」現象と呼ばれる問題が,固体照明応用における高出力化の阻害要因として顕在化している。これまで,その原因として,(i)オージェ再結合,(ii)電子の活性層からのリーク,(iii)活性層でのホールの欠如,(iv)局在中心からのキャリアのリーク等が挙げられてきた。しかしながら,統一的な理解には至っていないのが現状である。そこで,平成21年度は,InGaN量子井戸活性層からのフォトルミネッセンス(PL)の強度や波長分布が,高キャリア注入時にどの様に変化するかに着目して,青色発光および緑色発光の試料について,近接場光学顕微鏡(SNOM)による詳細な評価を行った。その結果,青色発光の試料では,キャリアがオーバーフローしても,いわゆる"Anti-localization"効果によって,非輻射再結合中心への捕獲が抑制されているが,よりInリッチInGaNを活性層とする緑色発光の試料では,高キャリア密度時に,キャリアの拡散長が長くなり,キャリアが非輻射再結合中心に捕まる確率が増強されていることが明らかとなった。このことから,緑色LEDの「Droop」現象を抑制するには,活性層の発光再結合寿命を短くすることでキャリア拡散長を低減したり,非輻射再結合中心を低減すことが有効であるという示唆が得られた。
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