2006 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波と分子磁性相互作用の理論・分子動力学研究
Project Area | Microwave-Excited, High-Temperature Thermally Non-Equilibrium Reaction Fields |
Project/Area Number |
18070005
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
田中 基彦 核融合科学研究所, 連携研究推進センター, 助教授 (80167501)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 裕彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70178226)
佐藤 学 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40226006)
|
Keywords | マイクロ波 / 非共鳴吸収加熱 / 古典分子動力学 / 高強度近赤外レーザー / フラーレン / 第一原理分子動力学 / グラファイト / 化学スパッタリング |
Research Abstract |
今年度は物質と電磁波の相互作用に関して、古典分子動力学法(CLMD)および第一原理分子動力学法(Ab initio)を用いて、次の3件の研究を行った、(i)マイクロ波吸収による水・氷・食塩水の加熱過程(CLMD)、(ii)レーザー電場によるフラーレン分子の構造変形(Ab initio)、(iii)グラファイトの化学スパッタリング過程(Ab initio)。第1の研究では、与えた温度の約3000分子の剛体水分子を氷結晶を融解させて生成、そこにマイクロ波電場を印加した。まず、水(300K)の加熱が、電気双極子の回転運動励起と分子間摩擦による非可逆的エネルギー移動の協調により生じることを確かめた。しかし氷状態の水は、強い水素結合で形成された結晶であるため強いマイクロ波(10^6V/cm)でも加熱できない。微量の食塩を加えた水は純水より数倍よく加熱されるが、これはマイクロ波電場による食塩イオンの加速、すなわち「ジュール加熱」が原因であることを分子動力学法により実証した。第2の研究では、レーザー電場によって歪んだ断熱ポテンシャル上の核の動きを第一原理分子動力学計算によって追跡することに成功した。この手法を用いて,高強度近赤外パルスによってどのようにC60の構造が変化するのか、また、どの程度のエネルギーがどの分子振動に注入されるのかを明らかにした。第3の研究では、グラファイトの化学スパッタリングの原因が、多数の水素原子の吸着にあることを示した。すなわち、異なる炭素原子がそれぞれ水素を吸着することでグラファイト表面に原子の起伏が生じ、その結果結合が弱いサイトができて、炭化水素CH_2、CH_3の形成と炭素間の結合切断が生じることを第一原理分子動力学法で示した。これは実験でグラファイトから初めて脱離する分子種がCH_3であることをよく説明している。他方、高温(1000K)では化学スパッタリングの効率は減少することが知られているが、これは熱運動する水素原子がグラファイト表面にとどまりにくいことが原因であることを明らかにした。
|