2010 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波と分子磁性相互作用の理論・分子動力学研究
Project Area | Microwave-Excited, High-Temperature Thermally Non-Equilibrium Reaction Fields |
Project/Area Number |
18070005
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
田中 基彦 中部大学, 全学共通教育室, 教授 (80167501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 裕彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70178226)
丸山 耕司 理化学研究所, デジタルマテリアル研究チーム, 研究員 (00425646)
善甫 康成 法政大学, 情報科学部, 教授 (60557859)
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Keywords | マイクロ波加熱の機構 / 誘電体、磁性体、金属粉体 / 有限要素法による電磁波と加熱解析 / 密度汎関数法(DFT) / DFTによる水のマイクロ波加熱 / スピンを含む時間依存密度汎関数法 / スピン、原子運動結合系 / マイクロ波の化学反応促進効果 |
Research Abstract |
この研究課題では、主として量子力学の観点からマイクロ波による物質(誘電体、磁性体、金属粉末)加熱の機構を研究している。今年度は(i)ハイゼンベルクモデルを用いて電子スピンを記述、これを結晶格子を構成する古典原子系と結合させ、マイクロ波による磁性体加熱を研究、(ii)密度汎関数法に基づく量子力学的分子動力学法による水(誘電体)の加熱過程の研究、(iii)時間依存密度汎関数法の、電磁波と磁性物質相互作用の研究に向けた整備、(iv)実験で使うキャビティをモデル化、電磁波伝搬を解析、金属粉末加熱の電界・磁界加熱特性の予測、(v)状態遷移理論をマイクロ波照射下で分子内組み換えが起きる化学反応に適用、反応速度を評価、である。第1の研究では、マイクロ波磁場印加のもとで電子スピン運動方程式と原子運動方程式を連立して解き、マイクロ波から磁性結晶へのエネルギーの流れを解析する方程式系を確立、この計算機シミュレーションコードを作成した。これまでにキュリーワイス則に従う磁化の温度依存性が正しく再現され、結晶が安定に平衡となる状態が得られた。今後マイクロ波磁場印加のもとで長時間ランを行い、マイクロ波から物質へのエネルギーの流れを解明する。第2の研究では、自己無撞着に原子間力を決定する量子力学的な扱いのもとで、マイクロ波により液体の水に対して、水分子の回転運動励起が発生、加熱が起きることが確認された(論文準備中)。第3の研究では、電磁場などの外部刺激に対する物質の様々な応答を研究する手段として、実時間・実空間での時間依存密度汎関数法の開発を進めた。この手法は物質の動的、あるいは励起に伴う特性の解析に対してきわめて有効である。これまでに電場の応答による電磁状態の変化について基本的特性を求めることができるようになった。第4の研究では、実サイズ(粉体1cm)で金属粉末(粒径ミクロン、1次元で10000倍スケールが異なる)を扱う3次元数値計算法を確立し、粉体の形状・位置・キャビティ長などが微妙に効いて磁界加熱または電界加熱の違いが生じることを示した(論文投稿中)。第5の研究では、分子反応速度が状態遷移理論で定量的に求められ、実験とよい一致を見たが、マイクロ波による反応促進効果の解明は今後の課題である。
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