2011 Fiscal Year Annual Research Report
大強度ニュートリノビームを使ったニュートリノフレーバー振動の研究
Project Area | New Developments of Flavor Physics |
Project/Area Number |
18071005
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
西川 公一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 所長 (60198439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中家 剛 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50314175)
小林 隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (70291317)
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Keywords | ニュートリノ / 質量 / 振動 / フレーバー混合 / T2K / 大強度ビーム / J-PARC / スーパーカミオカンデ |
Research Abstract |
本年度の最も大きな研究成果は本研究の最大の目的であるミューニュートリノから電子ニュートリノへの変化(電子ニュートリノ出現)の探索において、世界に先駆けてその存在を高い確率で示したことである。茨城県東海村の大強度陽子加速器J-PARCの陽子ビームを用いてミューニュートリノを生成し295km離れたスーパーカミオカンデ検出器で測定した。2010年1月から2011年3月11日震災当日まで1.43x10^<20>個の陽子を用いてニュートリノを送出、その全てのデータを解析したところ、6個の電子ニュートリノ反応を捉えた。一方、電子ニュートリノ出現が起こっていない場合でも、ビームにもともと微量混じっている電子ニュートリノや検出器の誤識別により電子ニュートリノ反応として検出されてしまう"背景事象"の数はJ-PARC内の各種ビームモニターなどの測定により1.5±0.3個と見積もられた。この背景事象の揺らぎにより、実際に検出された6事象が全て背景事象である確率は0.7%と計算された。この結果は電子ニュートリノ出現の存在を強く示す世界で初めての実験的結果である。この結果により、三種類のニュートリノの関係を解明する重要な鍵とされてきたパラメータが有限であることが初めてしめされ、ニュートリノの性質の全貌解明、さらには宇宙の物質起源解明へ向けた大きな一歩となる。この結果はPhysical Review Lettersに掲載され、2012年5月5日現在までに299回引用されている。また英国物理学会(IoP)により、全ての物理分野の成果のなかから2011年のTop10のブレークスルーに選ばれた。 もう一つの重要な目的であるミューニュートリノ消失(ミューニュートリノを生成し、飛行中に他のニュートリノへ変化することによりミューニュートリノの数が減少する)の測定も行い、過去の実験と一致する結果を得た。 実験の方は、震災復旧作業の後、12月24日以降震災後初のビーム試験を行い、装置の健全性を確認、3月から本格的にデータ収集を再開した。
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