2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外増殖性グラム陰性菌の増殖・生活環および病原性発現機構の研究
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
18073003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 The University of Tokyo, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 哲也 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授 (90221746)
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Keywords | 赤痢菌 / 腸炎ビブリオ / 3型分泌装置 / 感染 / 病原性 / エフェクター |
Research Abstract |
赤痢菌は、感染においてIII型分泌装置(TTSS)を通じて宿主細胞へ約60種のエフェクターを分泌している。これらエフェクターは、感染の開始から成立に至るまで感染の各段階で重要な役割を果たしていることが示唆されている。本研究では、感染初期に上皮細胞へ侵入した赤痢菌からTTSSを通じて細胞質へ分泌されるエフェクターの一つ、OspIの細胞内機能について解析を行った。OspI遺伝子を上皮細胞内で発現させると、NOD1経路で刺激されたNF-κBの活性化が顕著に抑制された。野生型赤痢菌とOspI遺伝子欠損株をHeLa細胞へ感染させ、宿主遺伝子応答をDNAマイクロアレーで調べた。その結果、OspI遺伝子の存在により、IL-8をはじめとする一連の炎症性サイトカイン遺伝子の発現が有意に低下していた。一方、OspIを結晶化して立体構造を解析した結果、OspIの活性中心と推定される部位には、脱ユビキチン化酵素であるUCH-L3の活性中心にあるアミノ酸残基とその立体構造に類似性があることを見いだした。OspIの推定される活性中心に位置する62番目、145番目、160番目のアミノ酸残基を他のアミノ酸と置換すると、NF-kBの活性抑制性が有意に低下した。これら一連の結果から、OspIは感染初期において炎症応答を抑制する機能を有するエフェクターであることが推定された。しかしながら、OspIの標的因子として現在まで複数の候補因子を同定しているが、真の標的を決定するための決定的な証拠はなく、次年度に引き続き同定に必要な実験を実施する。 腸炎ビブリオのもつ2種類の3型分泌装置(T3SS1およびT3SS2)の活性(それぞれ細胞毒性および腸管毒性)に主たる役割を果たすエフェクター(VP1680およびVopE)の宿主細胞内における標的分子の同定を、プルダウン法や酵母変異株ライブラリを利用して行った。その結果、それぞれのエフェクターに対する標的分子候補を明らかにできた。またVopEに関しては標識エフェクターを用いた細胞内局在の解析を行い、標的分子への局在を確認できた。
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