2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
18073004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北 潔 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (90134444)
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Keywords | 感染症 / 酵素 / 進化 / 発現制御 / 発生・分化 |
Research Abstract |
我々は回虫やトリパノソーマなどの寄生虫と宿主であるヒトのミトコンドリアを用いて酸素適応機構の解明を目的として研究を進めているが、中でも嫌気的な小腸に生息する回虫成虫で見出したNADH-フマル酸還元系は多くの寄生虫に存在し、宿主体内の環境で中心的な役割を果している事が明らかになった。この系は複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)、ロドキノンおよび複合体II(ロドキノールーフマル酸還元酵素 : RQFR)の3成分から構成され、NADHからフマル酸への電子伝達を触媒している。その生理的意義は低酸素下でも複合体Iの共役部位を駆動する事によりATPを合成できる点にある。一方、発生に酸素を必要とする幼虫では哺乳類型の酸化的リン酸化によってATPを合成している事も判ってきた。そこで本研究ではNADH-フマル酸還元系の分子構築とその生理機能の特徴を明らかにし、生活環におけるダイナミックな呼吸系の変動の制御機構を解析する目的で研究を進めている。平成20年度は以下の結果を得た。 1)受精卵、幼虫および成虫における複数の多様な複合体IIの分子構築と電子伝達機能 : 生理的条件下でフマル酸還元酵素として機能する成虫複合体IIが活性酸素種を生成する事を見出して解析した結果、基質の酸化還元に関与するFADおよびキノン結合部位の二つの部位から還元力が酸素に伝達されている事が判った。また、コムギ胚の系を用いて成虫酵素の各サブユニットの発現を試みた結果、全てのサブユニットがペプチドとして合成されたが、興味深い事に疎水性のアンカーサブユニットは共存させたリボソームに局在した。 2)宿主体内移行を含む、全生活環におけるミトコンドリア機能の変動とその調節機構 : 実験的宿主として,本来の宿主であるブタを用いて感染幼虫包蔵卵を経口摂取させ、体内移行中の複合体IIのサブユニット組成および酵素としての性質の変動を調べた結果、肺のステージでは、ウサギと同様にキメラ型が観察されたが、サイズは大きく異なり宿主・寄生体相互作用の種特異性が明確になった。
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