2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
18073004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北 潔 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (90134444)
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Keywords | 感染症 / 酵素 / 進化 / 発現制御 / 発生・分化 |
Research Abstract |
我々は回虫やトリパノソーマなどの寄生虫と宿主であるヒトのミトコンドリアを用いて酸素適応機構の解明を目的として研究を進めているが、中でも嫌気的な小腸に生息する回虫成虫で見出したNADH-フマル酸還元系は多くの寄生虫に存在し、宿主体内の環境で中心的な役割を果している事が明らかになった。この系は複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)、ロドキノンおよび複合体II(ロドキノールーフマル酸還元酵素:RQFR)の3成分から構成され、NADHからフマル酸への電子伝達を触媒している。その生理的意義は低酸素下でも複合体Iの共役部位を駆動する事によりATPを合成できる点にある。一方、発生に酸素を必要とする幼虫では哺乳類型の酸化的リン酸化によってATPを合成している事も判ってきた。そこで本研究ではNADH-フマル酸還元系の分子構築とその生理機能の特徴を明らかにし、生活環におけるダイナミックな呼吸系の変動の制御機構を解析する目的で研究を進めている。平成21年度は以下の結果を得た。 1.受精卵、幼虫および成虫における複数の多様な複合体IIの分子構築と電子伝達機能:昨年度の研究から成虫複合体IIがコハク酸酸化時に大量の活性酸素を放出し、その主要な発生部位はFADの近傍である事が判ったので、幼虫に関して調べたところ、フマル酸還元活性の低い幼虫の酵素では活性酸素の発生量も低い事が明らかになった。しかしその主要な発生部位は成虫同様に、FADの近傍であった。 2.宿主体内移行を含む、全生活環におけるミトコンドリア機能の変動とその調節機構:感染幼虫包蔵卵を固有宿主であるブタと非固有宿主であるウサギに感染させ、肺のステージの3期幼虫(LL3)ミトコンドリアのNADH-フマル酸還元系に関して調べた所、複合体IIの中でFpサブユニットは幼虫型と成虫型が存在する一方、膜アンカーのCybSはほぼ成虫型に変換していた。さらにこのLL3を4期まで培養すると感染宿主により、複合体IIの性質が異なる事が明らかになった。
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