2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイナス鎖RNAウイルスの感染と病原性に関与する宿主因子の同定
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
18073014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳 雄介 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (40182365)
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Keywords | 麻疹ウイルス / ウイルス受容体 / H蛋白質 / SLAM / 極性上皮細胞 |
Research Abstract |
麻疹ウイルスの主要な受容体は免疫細胞に発現するSLAM(CD150)である。麻疹ウイルス野生株は、一般にSLAM陽性培養細胞株以外には感染しない。多くの培養細胞を調べることにより、ヒト肺癌由来細胞株H-358および4種のヒト極性上皮細胞株が麻疹ウイルスに感受性を示すことがわかった。極性上皮細胞はtight junctionでapical側とbasolateral側に分けられるが、感染した極性上皮細胞からの麻疹ウイルスの放出はapical側にのみ起こった。受容体結合蛋白質であるH蛋白質の結晶構造に基づいて、モルビリウイルス属(麻疹ウイルスが属し、ほぼ共通のトロピズムや病態を示す)H蛋白質間で保存されている分子表面アミノ残基に変異を導入することにより、上皮細胞受容体との結合に関与していると考えられる3アミノ酸残基を同定した。SLAM認識に重要な残基と上皮細胞受容体の認識に重要な残基は、H蛋白質の立体構造上の隣接する別の領域に存在していた。SLAM認識に重要な領域には酸性アミノ酸が数多く存在していた。類縁分子の構造に基づいて予測したSLAM構造にはリジンが集積した場所があり、これらのリジンに変異を導入する実験により、そのいくつかは実際にH蛋白質との結合に関わっていることが示された。従って、H蛋白質とSLAMの相互作用は酸性および塩基性アミノ酸間の静電気的相互作用が重要な役割を担っていると考えられる。一方、上皮細胞受容体の認識に重要な領域には芳香環を持つアミノ酸が認められた。従って、この受容体との相互作用には疎水性相互結合が関わっていると考えられる。現在、麻疹ウイルスと受容体の相互作用をさらに明らかにするために、上皮細胞受容体の同定およびH蛋白質/SLAM複合体の結晶構造の解明を進めている。
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Research Products
(16 results)