2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによるF1モーターの化学-力学エネルギー変換機構の解明
Project Area | Innovative nanoscience of supermolecular motor proteins working in biomembranes |
Project/Area Number |
18074004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 重彦 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (70402758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池口 満徳 横浜市立大学, 大学院・生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (60261955)
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Keywords | 分子モーター / 酵素反応 / 分子シミュレーション / QM / MM法 / 分子動力学法 |
Research Abstract |
本課題研究は、分子シミュレーションの手法を用い、可逆的回転分子モーターであるF1-ATP合成酵素の化学-力学エネルギー変換機構を原子・電子レベルから解明することを目指す。 今年度は、次のような研究成果を得た。(i) 分子モーターの力学エネルギー発生の主原因と考えられるATP結合時のβサブユニットの構造変化について、構造変化過程の自由エネルギープロファイルを得た。ATP結合状態と非結合状態の双方について、βサブユニットの構造変化過程の自由エネルギープロファイルを計算したところ顕著な違いが認められ、ATP結合によってどのようにβサブユニットの構造変化が誘導されるのか、側鎖レベルまで詳細なメカニズムが明らかになった。ここで得られた知見はNMRなどの実験結果とよく一致していた。(ii) ATP加水分解のメカニズムを明らかにするために、重要な残基と考えられるアルギニン残基(アルギニンフィンガー)をリシンに置換した変異体についての化学反応性解析を行い、実験結果との比較検討を通して、アルギニンフィンガーの化学-力学エネルギー変換における役割と重要性を明らかにした。リシン変異体の構造を分子動力学計算によりモデルし、非経験的QM/MM法により化学反応プロファイルを計算した。その結果、天然タンパク質よりも加水分解速度が減少し、また天然タンパク質で観測された重水による同位体効果が表れないことが予測され、変異体を用いた一分子実験でも実証された。この変異による変化は、リシンの構造的要因により、重要な結晶水分子を含むATP結合部位の構造変化によりもたらされることを見出した。
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Research Products
(18 results)