2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによるF_1_分子モーターの化学―力学エネルギー変換機構の解
Project Area | Innovative nanoscience of supermolecular motor proteins working in biomembranes |
Project/Area Number |
18074004
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 重彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70402758)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池口 満徳 横浜市立大学, 大学院・生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (60261955)
|
Keywords | 分子モーター / 酵素反応 / 分子シミュレーション / 分子動力学法 / F_1-ATPase / QM/MM法 / 自由エネルギー計算 / 酵素設計 |
Research Abstract |
本課題研究は、分子シミュレーションの手法を用い、可逆的回転分子モーターであるF_1-ATP合成酵素の化学-力学エネルギー変換機構を原子・電子レベルから解明することを目指す。 今年度は、次のような研究成果を得た。(i)βサブユニットのC端ドメインでγサブユニットと接触する部分をグリシンに変化させた変異体での分子動力学シミュレーションを遂行し、その変異体でトルクが落ちるとした一分子実験の結果に一定の解釈を与えた。(ii)ADP-Piの加水分解後の構造変化について、α-βサブユニット複合体の構造変化過程の自由エネルギープロファイルを得た。 (iii)京都大学の木下研究室と共同で水の統計力学理論を用いたF_1分子モーターの解析を行い、分子動力学シミュレーションでも観察された非対称のパッキングが分子回転メカニズムにおいて重要な役割を果たしていることを指摘した。(iv)酵素活性を増強する変異体を設計した。昨年度までに、ATP加水分解反応機構を、理論的な反応経路解析及び領域内共同研究による実験的検証を通して解明した。その際、反応性を制御するアルギニン残基(アルギニンフィンガー)の酵素活性制御における重要な役割を明らかにした。そこで得られたアルギニンフィンガーの物理化学的特徴を踏まえ、非天然アミノ酸を用いた変異体モデルを設計し、QM/MM計算を行い化学反応エネルギープロファイルを解析することにより、加水分解反応速度が増加する変異体モデルをえた。設計により得られた人工設計酵素モデルは、現在、領域内共同研究により実験的な検証を行っている。
|
Research Products
(9 results)