2010 Fiscal Year Annual Research Report
イネ細胞質雄性不稔に見られる核とミトコンドリアのゲノム障害
Project Area | Genome Barriers in Plant Reproduction |
Project/Area Number |
18075002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥山 欽哉 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20183882)
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Keywords | イネ / 生殖 / 細胞質雄性不稔 / ミトコンドリア / ゲノム |
Research Abstract |
細胞質雄性不稔性は、ミトコンドリアゲノムと核ゲノムの特定の組み合わせで花粉発育障害が起きる現象である。雄性不稔細胞質のミトコンドリアには雄性不稔の原因となるキメラ遺伝子が存在し、一方、核コードの稔性回復遺伝子はキメラ遺伝子産物の修飾を行なって障害を回避していると考えられる。イネにおける3種類の細胞質雄性不稔/稔性回復系統(BT-CMS/Rf1,LD-CMS/Rf2,CW-CMS/Rf17)を材料とし、それぞれ、雄性不稔発現機構および稔性回復機構の解明を行なうことを目的とした。 LD-CMSとCW-CMSのミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定し、CMSミトコンドリアでゲノムのダイナミックな再編が起きていることを示した。CW-CMSの原因遺伝子の候補として新規キメラ遺伝子CW-orf307を見つけた。5種類のCMS系統の花粉形態、ミトコンドリア遺伝子のRFLP、および、核遺伝子発現のアレイ解析を比較することで、ミトコンドリアゲノムの類似度が核遺伝子の発現パターンと花粉形態の類似度に極めてよく関連していることを示し、ミトコンドリアが花粉の運命を決定していると結論した。LD-CMSの稔性回復遺伝子Rf2は、152アミノ酸からなるグリシンリッチタンパク質をコードしていることを明らかにした。BT-CMSに対するRf2の作用より、RF2はatp6-orf79mRNAの減少とORF79の蓄積量の減少に関与すると考えられた。新しい仕組みの稔性回復機構を明らかにした。 BT-CMS/Rf1は「CMS原因を破壊するタイプ」、LD-CMS/Rf2は「CMS原因をなだめるタイプ」、CW-CMS/Rf17は「CMS原因を無視するタイプ」というモデルを提唱した。本研究は、核とミトコンドリアのゲノム障壁を分子遺伝学的に明らかにするとともに、ハイブリッドライスの育種に貢献する。
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Research Products
(19 results)