2010 Fiscal Year Annual Research Report
生殖過程におけるジベレリン生合成と信号伝達に関する分子遺伝学的解析
Project Area | Genome Barriers in Plant Reproduction |
Project/Area Number |
18075006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 信 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (00270992)
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Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究は、「GAが雄性生殖器官の発達と受粉能力にどのように関与するか」を明らかにすることを目的とした。最終年の本年は、「GAは本来、雄性生殖ホルモンとして機能した」と言う作業仮説の元、以下の実験を行い、本作業仮説を検証した。イネのGAMYBとCYP703A変異体を用いた相補性検定の結果から、イヌカタヒバ(シダ類)およびヒメツリガネゴケ(コケ類)のGAMYB (SmGAMYB及びPpGAMYB)とCYP703遺伝子(SmCYP70A及びPpCYP703)がイネ内でも機能し、変異形質を相補しうることを確認した。また、イヌカタヒバの胞子形成時にGA合成阻害剤を処理すると、エキシン形成が異常となり、これはGA処理により回復することが確認された。これらの結果は、陸上植物においてGAMYBによる転写を介してエキシン形成、さらには雄性器官である胞子の発達を制御していたことを示している。 これまでヒメツリガネゴケ(コケ植物)にはGA分子が確認できない、GA受容関連遺伝子が存在しない等の理由から、コケ植物にはGA信号伝達は存在しないと考えられていた。しかし、今回の結果は、GA信号伝達の下流に位置するGAMYB以降の信号伝達はコケにも存在することを示唆した。そこで、コケのGAMYBをノックアウトしたところ、CYP703の発現は低下し、エキシン形成は阻害された。これらの結果は、GAMYB以降の信号伝達は、GA信号伝達機構確立前から陸上植物において機能していたことを示しており、逆に言えばGA信号伝達機構はGAMYBの制御機構をリクルートする形でそのシステムを構築したことを示している。
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