2008 Fiscal Year Annual Research Report
個体生存戦略における匂い・フェロモンセンサーの環境応答機能
Project Area | Molecular interaction and modal shift of cellular sensors |
Project/Area Number |
18077001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東原 和成 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (00280925)
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Keywords | センサー / 匂い / フェロモン / 受容体 / 昆虫 / チャネル / カイコ / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
本研究では、独自の嗅覚システムを進化させた齧歯類と昆虫に着目して、匂いとフェロモンのセンサー機能、センサー間相互作用、センサーを介した情報伝達経路、センサー情報を統合する神経回路網、センサー刺激による行動・内分泌変化などの個体応答を解析して、細胞感覚モジュールとしての嗅覚センサーの分子動態の全貌を明らかにする。本年度は、カイコ蛾幼虫の桑の葉摂食行動に関わる誘引匂い物質とそのセンサーを同定した。まず、カイコガゲノム上に存在する66個の嗅覚センサー(OR)のうち幼虫で発現している20個のORをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、電気生理学的測定による匂いリガンドの同定を試みた。匂い物質は、孵化幼虫の誘引物質として報告されている匂い、桑の葉のヘッドスペースおよび抽出物をGC-MSで解析して同定した匂いの計16種類を選んだ。機能解析の結果、これらの匂いに応答するORを7個見出した。次に、ORの発現解析を行った5齢幼虫がこれら16種類の匂い物質に誘引されるかどうかを行動実験により検証した。その結果、drjasmoneに強く誘引されることを見出した。さらに、ois-jasmoneに強く応答を示したORのリガンド構造活性相関と誘引活性相関が完全に一致した。Preparative GC-MSを用いた誘引物質探索の結果からも、桑の葉に含まれるカイコ誘引活性が最も高い物質はcis-jasmoneであることが明らかになった。本研究で、カイコの誘引・噛咬・嚥下という3段階の摂食行動のうち、嗅覚による誘引行動に関わる、桑の葉由来の匂い物質とそれを特異的に認識するORを同定することに成功した。カイコ蛾幼虫の摂食行動に関わる誘引物質とそのセンサーが見つかったことにより、食環境要因による嗅覚センサーの分子進化と機能的なモーダルシフトを議論することができると考える。
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Research Products
(4 results)