2006 Fiscal Year Annual Research Report
温度センサーTRPチャネルの機能制御機構と生理学的意義の検討
Project Area | Molecular interaction and modal shift of cellular sensors |
Project/Area Number |
18077012
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福見 知子 (富永 知子) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 生理学研究所, 助教授 (00280587)
稲田 仁 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特任助手 (60419893)
曽我部 隆彰 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別協力研究員 (70419894)
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Keywords | 神経生理学 / 生理学 |
Research Abstract |
新生仔マウスの表皮ケラチノサイトと後根神経節細胞の共培養系を確立した。その共培養の細胞に温度刺激を加えて、細胞内Ca^<2+>濃度の変化を観察した。40度までの温度刺激によって両細胞で細胞内Ca^<2+>濃度増加が観察された。しかし、ケラチノサイトに比べて神経細胞で細胞内Ca^<2+>濃度増加の遅れがみられ、平均して1.2秒の遅れであった。この遅れは、ケラチノサイトから感覚神経細胞に情報が伝達されるという仮説を支持する結果である。ケラチノサイトからは種々の刺激に応じてATPを放出することが知られている。そこで、ATP受容体阻害剤であるPPADSもしくはsuraminで前処理したところ、感覚神経細胞での細胞内Ca^<2+>濃度増加のみが特異的に阻害された。この結果から、温度刺激によってケラチノサイトからATPが放出されて感覚神経に発現するATP受容体に作用することが強く示唆された。温度刺激によるケラチノサイトからのATP放出をより直接的に検出する目的で、HEK293細胞にイオンチャネル型ATP受容体P2X2をバイオセンサーとして強制発現させて、ケラチノサイトと共培養した。ケラチノサイトに温度刺激を加えるとP2X2活性化によると考えられる特徴的な内向き整流性を有する膜電流の活性化が観察された。 体温近傍の温度で活性化するTRPV4の脳での発現を調べたところ、海馬でmRNAの強い発現が観察された。海馬神経細胞の単離培養系を確立して、TRPV4の発現と機能を検討した。TRPV4は海馬神経細胞およびグリア細胞に蛋白質レベルでの発現が確認され、シナプスでの発現が強く示された。パッチクランプ法でも単離海馬神経細胞においてTRPV4活性化電流が観察され、TRPV4が海馬で機能していることが示唆された。しかし、シナプス機能の解析では、野生型マウスとTRPV4欠損マウスでは有意な差は認められなかった。TRPV4は体温下で恒常的に活性化していると考えられ、温度上昇によって単離海馬神経細胞での細胞内Ca^<2+>濃度の増加が観察された。野生型マウスとTRPV4欠損マウスで海馬神経細胞の静止膜電位を調べたところ、室温では約-62mVで差がみられなかったが、37度では野生型マウスの海馬神経細胞でより大きな脱分極がみられ(約-51mV)、TRPV4欠損細胞より約5mV浅かった。また、野生型マウスの海馬神経細胞はTRPV4欠損細胞と比べて発火しやすいことが明らかとなった。海馬神経細胞に発現するTRPV4は体温で活性化して細胞を脱分極させて、神経の興奮性を制御しているものと考えられた。
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