Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 義久 甲南大学, 経済学部, 教授 (50148607)
藤川 清史 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60190013)
竹歳 一紀 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (00242800)
兒山 真也 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (30305677)
孫 頴 国立環境研究所, 社会環境システム研究センター・環境都市システム研究室, 特別研究員 (50536670)
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Research Abstract |
平成23-24年度は,本特定領域研究の集大成として研究のとりまとめを行い,英文学術書を出版することを中心的課題としてきた。そのために,本特定領域研究で得られた研究成果をまとめた論文を,環境経済・政策学会,Congress for the Korean Environmental Economics Association,Congress of East Asian Association of Environmental and Resource Economicsなどの国内外の学会大会で積極的に発表してきた。 これらの研究を通じて明らかになった主要な知見は,下記の4点に纏めることができる。 (1)東アジアでは,民主化・分権化と多国間環境会議・条約・外国援助が環境政策展開の重要な推進力であった。しかし民主化・分権化は揺り戻しの中で民主的制度がすんなり定着したわけではなく,また民主的に選ばれた政権が自然開発・工業化を正当化しかえって環境破壊が進んでいる面もある。環境援助も,環境法規制・制度の導入には資してきたが,必ずしも地元の利益と整合的な形で実施されるわけではなく,実効性を伴わないことも多かった。 (2)中国でのエネルギー・電力効率化を対象としたCDMは,温室効果ガス削減だけでなく,地元や日本の環境汚染の削減,中国の地域格差の是正などの多様な共便益をもたらしうる。しかし中国の技術国産化に対する高い要件と,小規模CDMに対する取引費用の高さが,共便益を生み出すCDM事業の推進を阻害してきた。 (3)東アジアが,地域協力によって東アジア地域やグローバルな環境問題を解決することは,グローバル化が進展する中でも費用効率的である。ASEANは経済統合の中で地域での問題解決を進めようとしているものの,北東アジアでは2000年代後半以降中国・韓国がこのアプローチを頓挫させた。 (4)環境問題を抜本的に解決するには,環境政策統合を通じて既存の経済成長パターンを変更することが不可欠であるが,東アジアではまだ端緒についたばかりである。
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