2020 Fiscal Year Annual Research Report
Universal physics of quantum matter for the state change and the phase change
Project Area | Clustering as a window on the hierarchical structure of quantum systems |
Project/Area Number |
18H05406
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
堀越 宗一 大阪市立大学, 南部陽一郎物理学研究所, 特任准教授 (00581787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 洋士 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60272134)
飯田 圭 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90432814)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 冷却原子実験 / 凝縮系物理学 / 原子核物理学 / 量子多体系 / 強相関フェルミ粒子系 / 非平衡物理学 / 量子流体 / 量子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
・実験研究:極低温原子気体を用いた量子シミュレーション実験へ向け、冷却光源システムの開発、真空チャンバーの開発、フェッシュバッハ磁場制御システムの開発、コイル冷却システムの開発、実験制御システムの開発、観測システムの開発を完了させ、30秒程度で約1億個の冷却リチウム6原子を極真空ガラスセル内に集めることに成功した。またレーザー光を用いた原子間の相互作用制御へ向けた光源開発として、波長670nm帯でヨウ素安定化レーザーシステムを開発し、オフセットロックシステムと組み合わせることにより広帯域でレーザー光の絶対周波数を1MHz以内に安定化できることを確認した。さらにリチウム6原子の2S-3P分子状態の分光実験へ向け、BBO結晶を用いた二次高調波発生による波長323nmの光源開発を進め、光増幅共振器の設計が完了した。
・理論研究:2019年度に得たフェルミ原子気体のBCS-BECクロスオーバー領域におけるずり粘性率の振る舞いと、本新学術領域研究のキーワードである、「物質階層」との関連付けを行った。また、フェッシュバッハ共鳴を有するボース-フェルミ混合原子気体に対する強結合T行列理論を完成させ、フェルミ原子を介したボソン間引力による系の不安定化と、ボソン間に直接はたらく斥力相互作用による安定化との競合現象を、弱結合から強結合領域まで明らかにした。新たな理論課題として、3体引力で相互作用するフェルミ粒子系において発現が期待されるクーパートリプルの性質、冷たい低密度中性子物質中のα粒子の性質変化がもたらすα粒子の少数系への影響を調べるとともに、ポーラロン間の相互作用を抽出するための実験提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・実験研究:物性研究から物質階層の移り変わりを示す物理量として、クラスター間の相互作用が直接反映される「圧縮率」と、粒子としての振る舞いがクラスターとしての振る舞いに変化したことが直接反映される「ずり粘性率」であることがこれまでの研究班の活動で明らかになった。さらに「ポーラロンの状態方程式」が媒質中の不純物間の相互作用、及び不純物がクラスター化する物理を理解するカギを握ることが理論研究で明らかになった。実験でこれら三つの重要な物理量を高精度に測定するため、再現性が高く強い信号強度が得られる装置開発が進んでいる。特にこれまでの実験装置はレーザーシステムに長時間運転に対し問題があったが、新しいシステムでは大きく改善されている。強い信号強度を得るためにはトラップ中の原子数を増やす必要があるが、我々は「グレーモラセス」という新しい冷却過程を導入することにより粒子数の増大を試みている。2021年度中に順次データ取得が行える進捗状況である。
・理論研究:これまでの研究で、ずり粘性率が、物質階層の移り変わりを考えるうえで重要な物理量の一つであることを理論的に示すことができた。またフェッシュバッハ共鳴を有する冷却原子気体を、クォーク-ハドロン階層に関連付けながら研究する準備が整った。多彩な物性を示すフェルミ多体系の性質を不純物を通して探る研究と、BEC-BCSクロスオーバーに代表される状態変化を探求する研究を系統的に行ってきた。また、トラップされた弱く相互作用する冷却ボース原子気体中のポーラロンの構造、2成分フェルミ原子気体における強磁性やスピン輸送に関する非平衡現象、冷却ボースフェルミ混合原子気体における超対称性、現実の3カラーを簡単化した2カラーのクォーク物質の超流動相図を2カラーの格子QCD計算を通じて第一原理的に明らかにする研究も行ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
・実験研究:今後行う「圧縮率」、「ずり粘性率」、「ポーラロンの状態方程式」の測定には同じ条件で複数回観測し平均化の処理が必須となるが、粒子数が揺らいでしまうとフェルミ温度が由来しまうため平均化処理により実験結果がぼやけてしまう。現段階で粒子数が20%程度揺らぐため、早急に粒子数の安定度を改善する。これが解決できれば、光トラップ、蒸発冷却実験と順次進め、リチウム原子気体の温度を100nK程度まで下げ、フェルミ超流動状態の確認を行う。その後、精密測定に向けての準備(磁場校正、トラップパラメータ、吸収断面積、飽和強度)を進め、2021年度8月からの測定開始を計画している。実験結果は速やかに理論研究と比較し、セミ階層におけるクラスターの物性及びその普遍性を明らかにする。
・理論研究:ずり粘性率の研究については、今後、超流動状態へ理論を拡張することで、フェルミ原子気体の温度-相互作用相図全域でのこの輸送係数の振る舞いを明らかにすることを計画している。また、今年度構築したボース-フェルミ混合原子気体の強結合理論を具体的な物理量の計算に適用することで、フェルミ原子系とは異なる物質階層変化の普遍性の存在を探り出すことを目指す。今年度まで公募研究を通じて当研究グループに参画いただいていた北大の堀内渉氏との共同研究をさらに発展させるべく、中性子物質中のα粒子という不純物問題から得られた知見を実験的に検証する可能性を追求する。また、中性子星内部の核物質を、超流動中性子物質中に少数の不純物(陽子やハイペロン)が含まれる系と考えることにより、超流動媒質が不純物間の相互作用への補正を通じて陽子のクラスタリングやハイペロンの超流動にもたらす影響を調べる。
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Research Products
(60 results)