2019 Fiscal Year Annual Research Report
Singularity cells in immunity and cancer development
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
18H05417
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡崎 拓 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 非常勤講師 (00362468)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片貝 智哉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00324682)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
Keywords | 免疫 / がん / シンギュラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
生体に異物が侵入すると、樹状細胞が抗原を捕捉してリンパ節に移動し、T細胞に抗原情報を提示する。しかし、T細胞は抗原と遭遇するだけで一様に活性化される訳では無く、様々な時空間的あるいは確率的条件を満たす細胞のみが活性化に至り、免疫応答もしくは疾患を惹起すると考えられる。本研究では、T細胞の適切な活性化、腫瘍の排除や自己組織の破壊、癌転移などをシンギュラリティ現象と捉え、それらの現象を担う細胞や分子を同定し、その発生条件や機能を解明することを目的とする。 これまでに、1型糖尿病のモデルマウスであるNODマウスにおいて、PD-1阻害により自己反応性T細胞が活性化される経路を描出することに成功している。当該年度には、特に強く活性化されたT細胞の特徴をより詳細に解析するとともに、ヒトにおけるPD-1阻害によるがん治療との関連を明らかにして論文発表した。また、試験管内でT細胞を抗原特異的に活性化し、T細胞の機能的変化を詳細に解析し得る実験系を構築し、T細胞の活性化に伴う遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、PD-1によって抑制を受けやすい遺伝子と受けにくい遺伝子が存在することを明らかにするとともに、その差を規定する因子を解明して論文発表した。 また、乳癌細胞株移植系において移植後数週間のうちに所属リンパ節への転移を認めたが、転移時期や規模、組織環境などに関する大きな個体差がみられ、生体内におけるシンギュラリティ現象を反映する可能性がある。PD-L1機能阻害による抗癌免疫応答の賦活化を検討したところ、癌細胞移植後早期の抗PD-L1抗体投与では原発巣増殖が明確に抑制されたが、移植後2週間以降からの投与では効果が消失することから、免疫抑制環境が早い時期に形成され、その確立後には免疫チェックポイント阻害による癌免疫賦活化が困難な場合があることを示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、T細胞の活性化、腫瘍の排除や自己組織の破壊などを担う細胞や分子を同定して解析することを目的とする。研究実績の概要に記載の通り、自己免疫疾患の発症に強く関わるT細胞の詳細を明らかにするとともに、抑制性免疫補助受容体PD-1がT細胞の活性化の程度を単に弱めるのではなく、質的にも変化させることを明らかにした。また、癌原発巣増殖やリンパ節転移におけるシンギュラリティ現象の存在を示唆する結果を得た。T細胞の活性化を評価する実験系やがん免疫応答を観察する実験系の構築も予定通りに進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
自己反応性T細胞の解析については、自己免疫疾患の発症に強く関わるT細胞の機能をより詳細に解析する予定である。また、抑制性免疫補助受容体による抑制を回避して活性化したT細胞を区別できるレポーターマウスを用いて、自己反応性T細胞の動態をより詳細に解析する。さらに、培養T細胞実験系を用いて、T細胞が活性化あるいは抑制されるメカニズム、および各種抑制性免疫補助受容体がT細胞の活性化に与える影響を詳細に解析する。癌免疫においては、免疫細胞動態やストローマ細胞変容、複数の免疫チェックポイント阻害との関連を検討する。
|
Research Products
(52 results)