2021 Fiscal Year Annual Research Report
Singularity cells in immunity and cancer development
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
18H05417
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 拓 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (00362468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片貝 智哉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00324682)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫 / がん / シンギュラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、T細胞の適切な活性化、腫瘍の排除や自己組織の破壊、癌転移などをシンギュラリティ現象と捉え、それらの現象を担う細胞や分子を同定し、その発生条件や機能を解明することを目的とする。 前年度までに、PD-1阻害により特定の自己反応性T細胞が特に強く活性化されて自己免疫疾患を惹起すること、T細胞および抗原の特性がPD-1による抑制効果に影響を与える可能性を見出した。そこで、同一の抗原ペプチドに対して異なる親和性を有するT細胞、同一の抗原受容体に対して親和性の異なる抗原ペプチド、同一の抗原受容体に認識されるもののMHCに対する親和性の異なる抗原ペプチドなどを比較することにより、抗原受容体と抗原ペプチドの親和性が低いほどPD-1に対する感受性が高くなることを明らかにして論文発表した。また、抑制性免疫補助受容体が新たな機構によりT細胞の活性化を抑制している可能性を見出したことから、分子メカニズムの解析およびライブイメージング解析を前年度に引き続いて実施した。 EGFPを発現するオボアルブミン(OVA)特異的 T細胞(OT-I-EGFP)を事前に少数移入したマウスに、OVA発現乳癌細胞株EO771-OVAを第5乳腺皮下に移植した結果、センチネルリンパ節である鼠径リンパ節内においてほぼ検出限界以下であったOT-I-EGFP細胞が、EO771-OVA移植後5日目をピークに劇的に増殖することをフローサイトメトリーにより検出した。また、リンパ節組織切片では癌抗原が到達する側の小葉T細胞領域において増殖した後、拡散していくことを確認した。他のリンパ節や脾臓では数日遅れてOT-I-EGFP細胞の増加が確認されることから、センチネルリンパ節における癌抗原特異的T細胞の増殖後に全身へ拡散する過程を追跡し、抗癌免疫応答のシンギュラリティ現象としての側面を検討することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、T細胞の活性化、腫瘍の排除や自己組織の破壊などを担う細胞や分子を同定して解析することを目的とする。これまでに、自己免疫疾患の発症に強く関わるT細胞の特性を明らかにするとともに、抑制性免疫補助受容体PD-1がT細胞の活性化を質的に変化させること、抗原親和性の低いT細胞をPD-1が特に強く抑制することなどを見出している。また、癌抗原特異的リンパ節応答とシンギュラリティ現象の関連を示唆する結果を得た。細胞間相互作用の解析などにおいて領域内共同研究も進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築してきた実験系を利用して、T細胞が活性化あるいは抑制されるメカニズム、および各種抑制性免疫補助受容体がT細胞の活性化に与える影響を解析する。特に、領域内共同研究により広視野かつトランススケールのデータを取得するとともに、画像解析法を開発し、T細胞活性化の制御機構を詳細に解析する。また、PD-1に対する感受性の違いを利用して、T細胞応答を制御する方法の開発を試みる。癌免疫においては、癌抗原特異的T細胞応答・動態とリンパ節環境、複数の免疫チェックポイント阻害との関連を検討する。
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Research Products
(26 results)