2018 Fiscal Year Annual Research Report
病態シナプス揺らぎに関するIn silico学習モデリング
Project Area | Constructive understanding of multi-scale dynamism of neuropsychiatric disorders |
Project/Area Number |
18H05432
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
豊泉 太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (50547461)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / スパイン揺らぎ / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞間の信号伝達を担うシナプスの強度は、シナプス後部位(スパイン)の体積にほぼ比例して強くなるとが報告されている。これまでスパインの体積変化は、記憶や学習のメカニズムとされる神経活動依存性のシナプス可塑性によって引き起こされると考えられてきた。しかし、近年の研究でスパイン体積はシナプス可塑性が無い状況でも変化することが分かってきた。神経活動がない状況下で起こるスパイン体積の変化をスパイン揺らぎと呼ぶが、スパイン揺らぎとシナプス可塑性が組み合わさることで学習や記憶にどのような影響が出るかは良く分かっていなかった。
本研究では数理モデルを用いて、スパイン揺らぎとシナプス可塑性が神経回路の記憶・学習に与える影響について研究した。神経回路モデルに、シナプス可塑性に加えてスパイン揺らぎを実装し、神経回路が記憶を安定して保持できるかどうかを数値シミュレーションした。その結果、シナプス揺らぎが過少な状況では、互いに強く結合した神経細胞集団が自発活動下で拡大するシナプス可塑性の効果により、神経活動が過活動になることが分かった。一方で、シナプス揺らぎが過多な状況では、シナプス可塑性の効果より速く、揺らぎによってシナプス可塑性の効果が消去されていくため、記憶が減衰することが分かった。これらの研究結果から安定して記憶を保持するためには、シナプス可塑性とシナプス揺らぎの適度なバランスが重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナプス揺らぎが記憶や学習に与える効果を数理モデルを構築することで調べることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症のモデル動物ではシナプス揺らぎが過多であることが報告されている。今後は病態モデルをシミュレーションすることによって、自閉症とシナプス揺らぎの関係を研究する。
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