2019 Fiscal Year Annual Research Report
病態シナプス揺らぎに関するIn silico学習モデリング
Project Area | Constructive understanding of multi-scale dynamism of neuropsychiatric disorders |
Project/Area Number |
18H05432
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
豊泉 太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (50547461)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉症 / シナプス動態 / 数理モデル / 主体感 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、複数の自閉症のモデルマウスで、スパインの生成・消滅が過多であることが報告されている。更に、自閉症の一種とされる脆弱X症候群のモデルマウスで、神経活動がない状態での、スパインの生成・消滅が野生型のマウスより多いことが報告され、この自閉症モデルマウスが過剰なスパイン揺らぎを持つことが指摘された。このことから、スパイン揺らぎの異常は精神疾患の原因の候補として考えられるようになっている。一方、精神疾患の多くは記憶・学習の障害を伴う。したがって、スパイン揺らぎが記憶や学習に与える影響を調べることは、精神疾患の病態を理解する上で重要である。
本年度は、精神疾患の動物モデルで観測されている異常なスパイン揺らぎを数理モデルに組み込むことによって、病態脳の学習モデルを構築した。このモデルに正常なシナプス揺らぎを組み込んだ場合には、互いに強く結合し合った神経細胞集団(セルアセンブリ)が外部からの刺激で形成され、このセルアセンブリによって記憶を保持できる。しかし、このモデルに脆弱X症候群のモデルマウスで観測されるシナプス揺らぎを適用したところ、その強すぎる揺らぎのせいでセルアセンブリの形成が阻害され、学習の遅滞が起こった。また、この病態モデルにおいて記憶の減弱を緩和するようにシナプスの密度を通常より上昇させたところ、一定割合のセルアセンブリを保持できるようにはなったが、一方で、減弱するセルアセンブリと癲癇様に過活動になるセルアセンブリも同時に観測されるようになった。本研究の数値シミュレーションは、過剰なシナプス揺らぎが原因で自閉症で見られる学習遅滞と癲癇様の活動が生じる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症動物で観測される過剰なシナプス揺らぎが記憶に与える影響を数理モデルを用いて予測した。
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Strategy for Future Research Activity |
多階層に渡って生じる病態をより詳細に理解するため、行動と神経回路をつなぐ数理モデルの構築に着手する。
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Research Products
(8 results)