2020 Fiscal Year Annual Research Report
Materials design of high-entropy alloys accelerated by synergistic combination of computational thermodynamics and simulation of phase transformations
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
18H05454
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小山 敏幸 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (80225599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 博司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70176923)
陳 迎 東北大学, 工学研究科, 教授 (40372403)
及川 勝成 東北大学, 工学研究科, 教授 (70356608)
阿部 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (50354155)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 状態図 / 拡散 / 第一原理計算 / 計算熱力学 / 拡散係数 / 機械学習 / 逆問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論状態図計算により、ハイエントロピー合金(HEA)は原子間相互作用が弱く理想溶体に近い振舞いを示すこと、および金属ガラス形成能の高い合金では原子間相互作用が強く規則化傾向が高いことを明確化した。またモンテカルロ法によりCantor合金系について温度低下に伴うエントロピー減少量ΔSを評価するとともに降伏応力の実験値と比較した結果、ΔSが負に大きい合金ほど降伏応力が高くなる傾向を見出した(大谷、榎木)。等原子組成系と非等原子組成系のFeCoNiCrMnとFeCoNiCrPdに対する第一原理計算を高度化させた結果、局所的な異方性の導入がPd系の力学特性向上に寄与することを明確化した。またこれらの合金系およびそのサブシステムのSQS構造に関する解析データ(fccとbccで200以上)を活用し、機械学習にて各種特性の相関を調査した(陳、Tran Nguyen Dung)。 Cantor合金を構成する10種類の3元系について、σ相の相境界を実験と計算から検証した。また短範囲規則化についてカルファド法による2元系の取り扱いを多元系に拡張し、短範囲規則(SRO)パラメータとその過剰ギブスエネルギーへの寄与を推定した結果、本手法のHEA解析への有効性を確認した(阿部、大沼、韓)。Cr-Mn-Ni系における相境界を実験的に決定するとともに熱力学的解析を実施した。さらにCr-Mn-Co系について、拡散対法により相互拡散係数を測定した(及川、上島)。 多成分系を対象に粒界・双晶偏析を計算するシステムを粒界相モデルに基づき構築した。また多成分系2相組織を対象に、着目する析出相と平衡する母相濃度を網羅探索する方法論を考案した。HEAでSluggish diffusion(SD)が生じ得る可能性を、ランダムウォークの数学理論から検討した結果、濃度揺らぎよりSDが生じ得る可能性が示唆された(小山、上島)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の主要な目標は、以下の3点であった。 (1)HEA固溶体のギブスエネルギー的描像(平均場的描像)と、短範囲規則などの原子的描像の、材料科学的理解を明確化する。 (2)不均質系を前提とした原子拡散を論理的に理解する。これにより、Sluggish-Diffusion(SD)を超えて、HEAにおける拡散の特徴とは何か、その本質を明確化する。 (3)データ同化および機械学習のHEA分野への展開を順次進める。 (1)短範囲規則については、電子論解析、ギブスエネルギー関数式、またモンテカルロ計算に基づき検討した結果、HEAにおける短範囲規則がいずれの手法においても解析可能であることが示された。特に短範囲規則の大きさ(局所的なエントロピー)と強度との間に相関が見出された点は、HEAの固溶強化を、短範囲規則や局所的なエントロピーから理解できる可能性を示した重要な成果と考える。(2)のSDについては、昨年度すでに、通常の拡散理論の範疇において、SDをハイエントロピー効果にて理解することは不可能と結論されたが、今回、さらにランダムウォークの数学理論に基づき検討した結果、ハイエントロピー効果で拡大される濃度揺らぎより、SDが生じ得る可能性が示唆された(ただし、この現象は、ナノスケールの濃度揺らぎが平均化されない状況下でのみ成立する)。以上の解析を通じて、HEAにおける原子拡散の描像は、ほぼ明確になったと考える。(3)の機械学習に関しては、まず電子論解析において、ランダム系のSQS構造に関する大量の計算データを取得し、機械学習ツールにてデータ分析を開始した。また2020年度に新たに考案した、多成分系の熱力学データ解析法においても大量のデータが得られるので、機械学習によるデータ探索との連携を今後加速する予定である。以上より、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度終了現在、個々のメンバーが有する各解析手法のHEA適用が深化し、当該分野の最先端レベルに到達したと考える。次年度は、解析手法の展開を加速するとともに、以下の3点に関して、検討を進める予定である。 (1)HEAの短範囲規則と力学特性の相関についてその起源を明確化する。 (2)HEAを代表とする多成分系における合金設計を念頭に置いた熱力学データベース活用手法を整備する。 (3)データ同化および機械学習のHEA分野への展開を加速させる。 またこれら3課題を推進する際、コロナ禍で滞っていた他班との連携強化を大きく進める予定である。あわせて、2019年度に開始した状態図計算サービスも継続する。
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Remarks |
代表者である小山は、上記HPにおいて、フェーズフィールド法を中心とした材料工学における各種計算理論およびフェーズフィールドシミュレーションプログラムを、継続的に公開している。また分担者の阿部は、物質・材料研究機構の「NIMS物質・材料データベース」のHPにおいて、平衡状態図の熱力学データベースを継続的に整備拡張・公開している。
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Research Products
(46 results)