2018 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced negative muon beam development
Project Area | Toward new frontiers : Encounter and synergy of state-of-the-art astronomical detectors and exotic quantum beams |
Project/Area Number |
18H05464
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
三宅 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別教授 (80209882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永谷 幸則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (00393421)
Patrick Strasser 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (20342834)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 負ミュオン / 冷却 / 非破壊検査 / ミュオン触媒核融合 / ラムザウアータウンゼント効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
数10ナノメートル径まで収束可能な超低速負ミュオンビームを開発し、収束負ミュオンビームの走査により、物質表面の元素分布・同位体分布や化学結合分布を、非破壊、極めて高い感度、3次元、かつ数10ナノメートルの分解能(深さ方向は数ナノメートル分解能)で可視化する革命的な分析顕微鏡となる走査負ミュオン顕微鏡の創出を目的としている。負ミュオンが物質中の原子に捕獲される際には、ミュオン特性X線を100%の確率で放出し、しかもそのエネルギーは電子の特性X線に比べ200倍も高く検出が容易である。水素やリチウムのような軽元素、あるいは生体の主要な構成要素である炭素・水素・窒素・酸素を高い感度で検出できる。例えば、急速凍結した生物試料の表面を削りながら観察することにより、生体を構成する元素・同位体・化学結合の3次元分布を網羅的にナノ分解能で再構成でき、生物分野にまさに革命的な分析手段を提供できる。
加速器で直接、得られる負ミュオンビームは、大強度だが、収束に難がある。ミュオン触媒核融合反応をビームの冷却手段として利用し、ナノスケール径まで収束可能な超低速負ミュオンビームを開発する。より微小な点に絞り込む事が可能な「高い空間コヒーレンス」の負ミュオンビームを実現できる。ミュオン触媒核融合反応により高エネルギーの負ミュオンを数keV程度まで冷却、再加速し、色収差補正光学系を用いてビームを収束する。更に、エネルギー分散の補正装置の開発により、エネルギーと運動量が揃った「高い時間コヒーレンス」を備える負ミュオンビームを開発する。これら、高輝度かつ時間および空間コヒーレントに優れた負ミュオンビームを用いて走査負ミュオン顕微鏡を開発し、3次元元素分析実験を行う。最終的には、世界で初めての超低速負ミュオンビームと走査負ミュオン顕微鏡を実現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C02研究計画班では①負ミュオン高度化のテーマでは、J-PARCミュオン実験施設の、すでに世界最高強度を達成している負ミュオンのビームラインの高度化した。空気中測定を可能とするコリメータの導入により、ミュオンビームの狭幅運動量化を実現し、運動量17 MeV/c~21 MeV/cについてガウス分布の半値幅(以下FWHMで表記)で24~35 %であったものを7 %程度にすることに成功した。②の超低速負ミュオンビーム開発のテーマでは、まず、低運動量ビームを引き出す為の測定手段として、これまで実績のあるマイクロチャンネルプレート(MCP)による測定方法を開発した。低運動量ミュオンに対する検出感度の高いMCPをモニタにして2.6MeV/c(32keV)の低運動量ミュオンビームの引き出しに成功した。更に、ミュオン触媒核融合反応をビームの冷却手段として利用し、ナノスケール径まで収束可能な超低速負ミュオンビームを生成する重水素の実験を行った。Dラインに2Kまで冷却可能な極低温固体水素標的実験装置を設置し、厚さ1mmの固体水素に数μmの重水素を蒸着したミュオン触媒核融合ターゲットに負ミュオンビームを照射、固体水素中でミュオンを止め水素とミュオンの束縛状態pμを生成、固体水素中に0.1%ドープした重水素との同位体置換によりdμを生成、低温量子効果のラムザウア・タウンゼント効果により重水素層まで拡散輸送させ、ミュオン触媒核融合を引き起こさせる実験である。標的からの中性子放出の確認により核融合反応を確認し、さらに新規に開発した同軸型の超低速ミュオンの輸送ラインにより超低速化されたミュオンを引き出し、チタンターゲットに照射し、ミュオン誘起のチタンの特性X線が出力されることも確認し、実際に超低速化されたミュオンが放出されることも確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの準備と設計に基づき、走査負ミュオン顕微鏡の核心部分であるビーム冷却装置を開発する。この装置は、加速器で生成し た広いエネルギー分布幅をもち大きなエミッタンスのミュオンビームを、極小スポットまで絞れる小さなエミッタンスのビームへと変換する装 置である。この装置はミュオン触媒核融合反応を利用して、ビームを冷却するためトリチウムを使用する。このため、国内においてトリチウム 取り扱いの専門家である富山大学水素同位体科学研究センターの原正憲氏、波多野雄治氏が分担者として新たに加わり、トリチウム取り扱い装置を開発する。来年度のJ-PARCでの実際のトリチウム使用実験に先立ち、重水素を用いたビーム実験や、富山大学においてのトリチウム使用の 非ビーム実験を実施する。重水素を用いる実験では、変換効率が低く実用性は見込めないが、ビーム冷却の原理実証ならびにトリチウム使用に 向けての経験蓄積を目的とする。 より具体的には、ビーム冷却装置の真空容器本体、トリチウム使用が可能なグローブボックス装置、トリチウム処理系を開発し、初期的な実験 を行う。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Location of the Neutron Dripline at Fluorine and Neon2019
Author(s)
Ahn D.S.、Fukuda N.、Geissel H.、Inabe N.、Iwasa N.、Kubo T.、Kusaka K.、Morrissey D.?J.、Murai D.、Nakamura T.、Ohtake M.、Otsu H.、Sato H.、Sherrill B.?M.、Shimizu Y.、Suzuki H.、Takeda H.、Tarasov O.?B.、Ueno H.、Yanagisawa Y.、Yoshida K.
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 123
Pages: 212501
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] New precise measurements of muonium hyperfine structure at J-PARC MUSE2019
Author(s)
Strasser P.、Abe M.、Aoki M.、Choi S.、Fukao Y.、Higashi Y.、Higuchi T.、Iinuma H.、Ikedo Y.、Ishida K.、Ito T.、Ito T. U.、Iwasaki M.、Kadono R.、Kamigaito O.、Kanda S.、Kawagoe K.、Kawall D.、Kawamura N.、Kitaguchi M.、Koda A.、Kojima K. M.、Kubo K.、Matama M.、Matsuda Y.、Matsudate Y.、Mibe T.、Miyake Y.、他28名
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Journal Title
EPJ Web of Conferences
Volume: 198
Pages: 00003(1-8)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Measurement and Mechanism Investigation of Negative and Positive Muon-Induced Upsets in 65-nm Bulk SRAMs2018
Author(s)
W. Liao , M. Hashimoto, S. Manabe , Y. Watanabe, S. Abe, K. Nakano, H. Sato, T. Kin, K. Hamada, M. Tampo, Y. Miyake
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Journal Title
IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE
Volume: 65
Pages: 1734-1741
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Negative and Positive Muon-Induced Single Event Upsets in 65-nm UTBB SOI SRAMs2018
Author(s)
S. Manabe , Y. Watanabe , W. Liao , M. Hashimoto , K. Nakano, H. Sato, T. Kin, S. Abe , K.Hamada, M. Tampo, Y. Miyake
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Journal Title
IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE
Volume: 65
Pages: 1742-1749
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] J-PARC Muon Facility, MUSE2018
Author(s)
Y. Miyake, K. Shimomura, N. Kawamura, A. Koda, P. Strasser, K. M. Kojima, H. Fujimori. S. Makimura, Y. Ikedo, Y.Kobayashi, J. Nakamura, Y. Oishi, S. Takeshita, T.Adachi, A. D. Pant, H. Okabe, S.Matoba, M. Tampo, M. Hiraishi, K.Hamada, S. Doiuchi, W. Higemoto, T. U. Ito, R. Kadono,
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 21
Pages: 011054(1-6)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 負ミュオンビームによる文理融合研究と今後の展開2019
Author(s)
三宅康博, 反保元伸, 竹下聡史, 下村浩一郎, 土居内翔伍, 橋本亜紀子, 梅垣いづみ, 齋藤努, 上野祥史, 松本直子, 山本悦世, 吉村浩司, 秋光純, 久保謙哉
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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[Presentation] J-PARCにおける超低速ミュオンビームのコミッショニング状況62019
Author(s)
足立泰平, Amba Datt Pant, 池戸豊, 大石裕, 中村惇平, Patrick Strasser, 伊藤孝, 髭本亘, 牧村俊助, 河村成肇, 下村浩一郎, 門野良典, 三宅康博, 鳥養映子
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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[Presentation] J-PARCにおける超低速ミュオンビームのコミッショニング状況62019
Author(s)
足立泰平, Amba Datt Pant, 池戸豊, 大石裕, 中村惇平, Patrick Strasser, 伊藤孝, 髭本亘, 牧村俊助, 河村成肇, 下村浩一郎, 門野良典, 三宅康博, 鳥養映子
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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[Presentation] J-PARCにおける超低速ミュオンビームのコミッショニング状況52018
Author(s)
足立泰平, Amba Datt Pant, 池戸豊, 大石裕, 中村惇平, Patrick Strasser, 伊藤孝, 髭本亘, 牧村俊助, 河村成肇, 下村浩一郎, 門野良典, 三宅康博, 鳥養映子
Organizer
日本物理学会 2018年秋季大会
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