2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Science of Soft Robot: interdisciplinary integration of mechatronics, material science, and bio-computing |
Project/Area Number |
18H05474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20512627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 健 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (40518932)
杉 拓磨 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (70571305)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 概日リズム / シアノバクテリア / 線虫 / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
コントローラブルな生物リズム・パターン現象の創成のため以下の取り組みをおこなった。 1.シアノバクテリア一細胞概日リズムの蛍光による長時間測定系の構築および、機械学習による細胞系譜を抽出する時系列画像解析パイプラインの構築を行い、細胞レベルの概日時計の周期の正確性、温度に対する依存性を調べた。個々の細胞の振動振幅が温度に対して依存することを発見した。また振幅の二乗が振動周波数と線形の関係にあることを見出した。温度補償された細胞サイズの24時間の振動素子を作る上で重要な知見を得た。 2.シアノバクテリア時計遺伝子の一つkaiAを欠失した細胞が減衰振動を示すことを明らかにした。kaiA欠失株はタンパク質時計を細胞内に構成しないが、遺伝子制御のネガティブフィードバックによって減衰振動を示す可能性を指摘した。この減衰振動は同調や温度補償性などの概日時計の要件を兼ね備えていた。数理モデルを構築し、シアノバクテリアの概日時計が、自律振動子であるタンパク質時計と減衰振動子遺伝子ネットワークの結合系であることを示した。 3. マイクロロボットとしての線虫集団を制御することは、ソフトロボット学の見地から考慮されるべき課題である。そこで線虫集団を光で制御する方法について検討を行った。これまで光遺伝学的な手法によって、線虫集団の行動を制御する方法はなかった。しかし光を忌避する性質を利用して、線虫集団を制御する可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究実施計画にあったシアノバクテリア概日リズム現象の解析に着手することができた。細胞レベルのサイズの概日リズムの特性を明らかにし、細胞サイズの体内時計の動態に関する知見を収集することができた。このリズム現象から、ソフトロボット学への応用可能なリズム理論の拡張に成功しており、より広く工学への適用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果は、以下のような今後の研究の推進方策につながる。 1. 概日リズムの振幅と周期が結びついていることは、環境温度を変えても概日リズムの周期はあまり変わらない(温度補償性)性質と関係があると考えられる。この性質を生み出す数理モデルの構築を行う。 2. 主に概日リズムは自律振動を中心に理論が構築されてきた。一方で、コアの体内時計メカニズムの中に減衰振動が潜んでいることは、概日リズムの前提としてきた仮定をくずし、より理論の拡張を考える必要があることを示唆する。特に減衰振動-自律振動の結合系の解析は数理として新しい問題設定になりうるだろう。 3. 線虫集団制御に関する理論を構築し、さまざまなパターンを生み出すような光による制御法を開発する。
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