2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Science of Soft Robot: interdisciplinary integration of mechatronics, material science, and bio-computing |
Project/Area Number |
18H05474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20512627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 健 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (40518932)
杉 拓磨 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (70571305)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | リズム / 植物 / 蚕 / ケンサキイカ |
Outline of Annual Research Achievements |
コントローラブルな生物リズム・パターン現象の創成のためとして以下の取り組みをおこなった。 1.植物概日リズムの測定系の構築を行った。植物の概日時計はシロイヌナズナを形質転換し生物発光による測定が簡便であるが、それ以外の生物では困難である。我々のグループでは、パーティクルボンバードメントによって、生物発光遺伝子を導入し、野外の生物の概日リズムを測定する系の構築に挑戦した。低温下の植物の応答に関して情報収集を行った。パーティクルボンバードメント法は、モデル生物でなくても適用可能であり、植物の様々な生物種に適用できることが期待できる。 2.ケンサキイカの色素胞の電気刺激による拡大縮小応答をレザバー計算としてみなす取り組みを行った。ケンサキイカ表皮にある色素胞とよばれる細胞電気によって色素顆粒が入った袋を拡大縮小することが知られている。そこで、日本語音声を電気刺激にかえ、細胞に与えたところ、与えられた音声に応じた応答が見られた。これをレザバー計算とみなし、リッジ回帰によって時系列画像から音声を取り出すリードアウトの設計に成功した。すなわち、イカ色素胞のダイナミクスを利用した音声識別器の作成に成功した。 3.蚕の平面吐糸現象の解析を行った。蚕は平面上の板に置かれると、繭を作るのではなく平面に糸をしきつめる。蚕はどのようなアルゴリズムで動き、均一な糸による面の作成が可能なのか、動画解析によって明らかにした。ソフトロボット学の観点からは、蚕は首をふることで自律的に絹糸の面をつくるロボットとみなすことができる。 4.線虫集団は特異な条件下では、活性化状態の素早い伝播がおこり回転運動を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、様々な生物種の生物リズム現象の解析に着手することができた。特にこれまであまり生物学では解析の対象となってこなかった、野外の植物、蚕、イカといった非モデル生物のリズム現象の解析に成功した。またこれらのリズム現象から、ソフトロボット学への応用可能な数理を抽出に成功しており、より広い生物への適用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果は、以下のような今後の研究の推進方策につながる。 1.キスゲやハマカンゾウといった近縁種であるが開花時刻が異なる植物が存在する。こうした花の開花時刻がどのように制御されているのか、リズム制御の観点からアプローチを試みる。 2.イカ色素胞の色情報をより効果的に利用することによって、音声識別機能を強化する。 3.蚕の精密なトラッキングによって蚕行動の精密な数理モデルを作成する。特に首振り運動をどのようなタイミングでおこなうことによって、さまざまな基盤図形に対応した平面吐糸を可能とするのかを調べる。 4.線虫の回転運動メカニズムに関して、数理モデルを作成する。線虫集団が対称性をやぶって回転運動を生み出す仕組みを明らかにする。
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