2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物との力学的アナロジーに学ぶ巨大建築構造システム設計
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
18H05486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 健一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40234041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 天昊 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90845728)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 建築構造 / 細胞 / biomimetics / tensegrity / 重力屈性 / 生長 / 膨圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来のスマート構造のような短時間の外乱(地震等)に対する損傷制御ではなく、より長い時間軸の外乱(重力等)に対する応答制御の原理を植物の力学的応答の研究者との分野を超えた交流、連携により調査し、重力屈性や自己修復、成長といった生体としての植物的戦略の知見を建築構造に活用することを目指している。特に2つのアプローチ(1)スケールを超えて成り立つ原理の抽出と建築構造システムへの応用、および(2)構造デザインへの新たな植物モジュールの応用、を柱として研究を推進している。 (1) スケールを超えて成り立つ原理の抽出と建築構造システム設計への応用 植物の生長時及び屈性時に発揮する力の測定を行い、その力の発揮メカニズムについて調査している。これより植物のもつ力学的最適化戦略について調査している。現在のところ豆苗の重力屈性力、ユーカリの伸長力に関して基礎的な測定を行った。今後は、上田(甲南大)、渡辺(東北大)等と協力して研究を進める。成長する構造モデルの数値シミュレーションと巨大建築構造設計の適応性に関して、建築構造に応用できる実モデルを提案すると同時に、数値シミュレーションにより可能な設計手法などについて探索している。(株)構造計画研究所の技術者(細見・石塚)等と協力して行っている。 (2) 構造デザインへの新たな植物モジュールの応用 圃場において植物の呑み込み現象や癒合現象を活用した新たなハイブリッド材料を開発し、構造デザインへの応用の可能性について検討をはじめている。現在育成している中からハイブリッド化が成功した材料に関して構造材料実験を行い力学性状を明らかにするまで行うことを考えている。現在は東京大学の駒場IIキャンパスと柏の葉キャンパスの圃場においてハイブリッド材料の成功を目指して主にユーカリ種を育成している。中楚(東大)、張(東大)、大谷(東大)等と共同で行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今まで、下記のような成果が得られており、おおむね順調に進んでいると判断している。 ・応力密度法による根系形状の杭構造への応用:応力密度法を用いて軸力密度を杭の摩擦力と仮定した形状決定解析を行った。形状は植物の根に倣ったトポロジーを採用。日本建築学会大会において口頭発表を行った。論文は梗概集に掲載された。 ・ジグソーパターンのジョイントへの応用 (桧垣匠):桧垣(熊大)等とミーティングを行った上で、シロイヌナズナ表皮のジグソーパターンの建築ジョイントへの応用に関する可能性について、実際に厚紙にジグソーパターンと、在来工法の蟻継ぎパターンをレーザーカッターにより作成し、簡易引っ張り実験を行った。ジグソーパターンは鎌継ぎより強く蟻継ぎパターンより弱いという結果を得た。 ・2020年日本建築学会大会においてオーガナイズドセッションを企画し15編の論文が集まった。論文は梗概集に 掲載されたが、COVID-19感染拡大の影響で建築学会大会そのものが中止となり、OSにおける情報交換は実 現しなかった。さらに建築学会会報で2020年6月号として特集号の形でまとめた。 ・植物の力学的応答の計測(藤原徹):栄養屈性を利用して根系形態を制御することで,地下構造物の屋根や躯体の補強材等として建築への応用を 見据えた新たな根系構造を提案することを目指し,藤原研の実験協力の下,まずは縮小スケールとしてイネ根 の2次元的な生長の観察及びその生長シミュレーションを行った.イネ根の栄養屈性の観察から得られたデー タを基に,植物の生長をシミュレーションするために開発されたPametric L-systemsと呼ばれるアルゴリズム に栄養屈性アルゴリズムを実装した.さらに,シミュレーションと観察記録を比較することでその妥当性を示した.
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Strategy for Future Research Activity |
テーマ項目1:スケールを超えて成り立つ原理の抽出と建築構造システム設計への応用 植物の生長時及び屈性時に発揮する力の測定を行い、その力の発揮メカニズムについて調査する。これより植物のもつ力学的最適化戦略について調査し、建築構造への応用に関する可能性を探索する。ユーカリを選定し、中楚(東大)、武藤(東大院生)等と成長力の実際の測定を行う。上田(甲南大)の屈性時挙動の知見と、渡辺(東北大)の水分計測技術と協力して成長時の運動や水分の移動とその際に発揮される力の大きさなどについて協働で研究を進める。上記の観察を進めながら、中楚洋介(東大)、武藤宝(東大院生)等と実際に成長する建築構造システムの可能性について検討を進める。植物細胞の膨圧と成長力の関係について、細川の計測技術と津川の数値解析技術と協働で調査を進める。成長する構造モデルの数値シミュレーションと巨大建築構造設計の適応性に関して、実モデルを提案すると同時に、数値シミュレーションにより細胞分裂の原理による構造の再現から始め、実際の建築構造に適用可能な設計手法などについて探索する。 テーマ項目2:構造デザインへの新たな植物モジュールの応用 圃場において植物の呑み込み現象や癒合現象を活用した新たなハイブリッド材料を開発し、構造デザインへの応用の可能性について検討する。現在育成している中からハイブリッド化が成功した材料に関して構造材料実験を行い力学性状を明らかにする。現在は東京大学の駒場IIキャンパスと柏の葉キャンパスの圃場においてハイブリッド材料の成功を目指して主にユーカリ種を育成している。スチール、ガラス、アルミ、ステンレス、アクリル、等の工業材料をユーカリに呑み込ませることでハイブリッド材料の形成実現可能性を確かめる実験を行っている。この実験によって、建築構造へ生きた植物を直接応用できる新素材の可能性について確かめる方針である。
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Research Products
(4 results)