2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物構造システム形成における内生・外生プログラムによる力学的最適化
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
18H05487
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
澤 進一郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (00315748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Ferjani Ali 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20530380)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | AFM / X線CTスキャン / 根系 / 根 / 茎 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、植物が機械刺激を内生発生プログラムに反映し利用している可能性については、ほとんど議論されてこなかった。多くの植物発生研究者が、研究手法の確立した分子生物学的・遺伝学的研究を行っている状況の中で、植物を対象とした張力測定や張力の人為的なコントロールといった機械刺激を扱う実験手法が確立されてこなかったことがその要因である。本研究では、植物がもつ2種類の構造システム形成戦略、(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システム、および、(2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システム、を読み解くことで、機械刺激が植物の形態形成を制御し、力学的構造最適化を図るしくみを明らかにする。このデータをもとに、様々な機械的攪乱に強い建築基礎のモデルを提案することを目的としている。 本年度は、領域の発足に伴い、実質的には10月以降、研究がスタートし、本計画研究の遂行にあたり、研究技術の開発と平行し、研究も順調に進んでいる。 まず、研究(1)のためには、Atomic Force Microscopeによる、細胞・組織表面の堅さ測定が必要不可欠である。このため、総括班でAFMを購入した。一方、植物を材料としてAFMを用いている研究者は国内にはいないため、ENS Lyon (France)のOlivier Hamant博士の所にAFMの利用方法などを習いに行った。この技術開発に伴って、これまで不可能であるとされてきた根の表面の堅さ測定にも成功した。今後、測定法の改良が必要だが、今年度中に、早くも、根と茎の両方を材料に、AFM試験ができる目処がたった。 研究(2)では、土中の根系を可視化し、根系の地面に張り付く力を測定するための技術開発の準備を行った。根系の可視化にはX線CT scanを利用する目処がたち、張り付く力の測定には、引っ張り試験機を利用することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システム、および、(2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システム、を読み解くことを目標としている。 この新学術領域研究の中で、研究(1)の実施のために、AFMの利用は必要不可欠であり、この新学術領域の目玉の一つにもなる、植物表面の堅さ測定の実施が重要な課題となることは明らかであった。初年度は、10月からのスタートであったが、フランスで、AFMの利用法や活用法を修得し、現在、その効率化などを行っている。来年度以降、実質的にAFMを利用した研究が展開できる目処がたったのは大きな成果であると言える。また、これまで、世界的にも類を見ない、根の表面の堅さ測定の目処も立ったことから、本研究にも、大きな一歩となった。実際、根の堅さは、茎の堅さの約1/100と、かなり柔らかいことがわかり、今後、この堅さがどのように植物の形態形成の最適化を担っているかが明らかになると思われる。 さらに、本研究のもう一つの課題である根系と地盤への張り付く力について、根系可視化のためのX線CTスキャン利用の目処が立ったことも大きな成果である。実際、シロイヌナズナとトマトの根系を可視化したが、十分、3次元構造解析に耐えうる解像度で可視化できた。また、張り付く力の測定も、引っ張り試験機を利用することで、正確に測ることができる事がわかり、現在導入準備中である。 このように、今回提示した全ての研究項目が順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システムの解明 機械刺激が茎の内部発生の力学的構造最適化を図るしくみを明らかにするために、茎にクラックが入るclv3 det3 突然変異体を利用する。この突然変異体を用いて、機械刺激がどのように内部の細胞分裂活性を制御するのか、また、サプレッサースクリーニングを通して、関連遺伝子を単離し、機械刺激が制御する内生発生プログラムの分子機構を明らかにする。また、植物感染性線虫の根への感染により形成される根瘤形成をモデルとして、機械刺激が根の内部発生の力学的構造最適化を図るしくみを明らかにする。茎と根と両方の異なるモデル系を用いて、総合的に、機械刺激が制御する内生発生プログラムを通じた力学的最適戦略システムの解明を行う。 (2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システムの解析 X 線CT スキャンを用いて、様々な植物種の、様々な根系をモニターする。さらに、それぞれの植物の引張試験をおこない、地面に張り付く力の測定を行う。さらに、根系構造と地面に張り付く力との相関を多次元解析し、どのような表現型が、機械的に地面に張り付く力に貢献しているのかを検討していく。次に、様々な地盤状況を再現し、どのように土壌中の根が機械的ストレスを感じ、それに対抗するように最適化構造を構築するかをシミュレーションする。その予想結果に応じて、3Dプリンターなどで模型根を人工的に形成し、実際、機械的攪乱に強くなったかを検証していく。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Regulation of Root-Knot Nematode Behavior by Seed-Coat Mucilage-Derived Attractants.2019
Author(s)
Tsai, A, Y-L., Higaki, T., Nguyen, C-N., Perfus-Barbeoch, L., Favery, B., and Sawa, S.
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Journal Title
Mol. Plants.
Volume: 12
Pages: 99-122
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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