2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
18H05496
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
上田 晴子 甲南大学, 理工学部, 准教授 (90402776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 功誠 大阪医科大学, 医学部, 助教 (30583471)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | アクチン / ミオシンXI / 姿勢制御 / 植物細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は,様々な環境変化(重力・光・接触など)に適応するために花茎や根などの器官を屈曲させる.一方,植物の器官はまっすぐに伸びる性質をもっている.まっすぐに伸びる性質に欠陥をもつシロイヌナズナのミオシンXI変異体の解析から,この性質が姿勢復元力として働くことによって,過度な器官屈曲を抑制することが明らかになった.しかし,植物が姿勢復元力を発動するしくみや,その意義はほとんど明らかになっていない.そこで,重力刺激に対する花茎の時空間的な姿勢変化を定量的に比較したところ,屈曲の開始時間や部位が野生型とミオシンXI変異体で異なることがわかった.これらの計測結果に基づいた数理力学モデルの解析から,ミオシンXI変異体の花茎では曲げ力が先端にかかり続けることが明らかになった.さらに,重力刺激によって花茎のどこにどの程度応力が働くかを有限要素法モデルにより分析したところ,野生型では基部領域に応力が集中するのに対し,ミオシンXI変異体では花茎の中間領域に応力が集中していた.すなわち,ミオシンXI変異体は曲がり過ぎることで力学的に不利になると考えられる.これらの結果から,復元力は,姿勢に変化が起こった時に植物体を力学的に適応させるためのシステムと考えられる.姿勢復元のしくみに関しては,アクチン・ミオシンXI細胞骨格が関与することに着目し,さまざまな組織で変異型アクチンを発現させた植物体の姿勢復元能力を調べることによって,姿勢復元に重要な役割を果たす花茎組織の特定を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,コロナ禍における研究活動の制限により,他大学に設置された機器を使用する実験を中心として研究計画を変更せざるを得なかった.また,植物の生育環境不良により植物材料の調達が困難な時期があった.しかし,取得済みの画像の解析やオンラインツールを活用した議論などで領域内の共同研究を進め,植物の姿勢復元が屈性応答とは切り離せない重要なステップであること,特に,数理力学モデルの分析から,姿勢復元力を備えた野生型の姿勢が力学的に有利であることが明らかになったことから,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
植物の姿勢復元力を力学的な適応システムと捉えて,そのしくみや意義の解明を目指す.主な研究計画は,下記の通りである. 1)これまで,アクチン繊維の形成を阻害する変異型アクチンを組織特異的に発現させたさまざまな形質転換体の作出を進めてきた.これらの形質転換植物の姿勢復元能力の判定と,変異型アクチンを発現した細胞のアクチン動態や原形質流動を解析し,アクチン・ミオシンXI依存的な姿勢復元機構に重要な役割を果たす花茎組織の特定を進める. 2)植物器官は複雑に運動するため,姿勢解析には植物体の形態を三次元的に抽出する必要がある.檜垣班が確立した三次元形態の再構築技術とその解析法を導入して,姿勢に与える復元力の影響を解析する.
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Research Products
(4 results)