2018 Fiscal Year Annual Research Report
ケモテクノロジーの分子基盤を創出するユビキチン構造生物学
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
18H05501
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深井 周也 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (10361792)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 分子間相互作用 / ユビキチン / シグナル伝達 / タンパク質工学 / ケミカルバイオロジー / キメラ化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチン修飾は、プロテアソームによるタンパク質分解のシグナルとしての役割にとどまらず、エンドサイトーシス、炎症シグナル、DNA修復、選択的オートファジーなどの多様な細胞機能に必須な役割を担う。ユビキチンは、C末端のグリシン残基と基質タンパク質の特定のリジン残基とのイソペプチド結合を介して基質タンパク質を修飾するが、ユビキチン自身も修飾の対象であり、7ヶ所のリジン残基(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)とN末端メチオニン(M1)のアミノ基を介して数珠つなぎになったユビキチン鎖として機能する例も多く知られる。近年では、異なる鎖が混在する鎖(混合鎖)や、途中で分岐した鎖(分岐鎖)の存在に加えて、リン酸化などの翻訳後修飾がユビキチンに起きることも明らかになり、ユビキチン修飾系は想定を超えた複雑さを呈してきている。本研究では、特定のユビキチン鎖を選択的に認識するユビキチン結合タンパク質や脱ユビキチン化酵素の立体構造解析により、新規の鎖タイプ選択的な認識機構を解明する。また、研究領域内で創出される機能性化合物の作用機構解明に必要な立体構造解析を行う。 今年度は、酵母のタンパク質分解系でK48鎖を認識するNpl4とK48鎖の複合体や、炎症シグナルで重要なTAB2タンパク質とK6鎖の複合体の立体構造を決定した。また、計画研究1(佐伯班)との共同研究で、K48鎖を介してプロテアソーム分解を制御する分子複合体E6-AP-RPN10の立体構造を決定し、機能を阻害するステープルペプチドを設計した。計画研究6(内藤班)との共同研究では、キメラ化合物SNIPERを介して結合するユビキチンリガーゼ(E3)と基質との相互作用を調べるための三者複合体の構造解析を、また、計画研究7(吉田班)との共同研究では、神経変性疾患に関わるE3に選択的に結合する化合物スクリーニングを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Npl4-K48鎖複合体やTAB2-K6鎖複合体の立体構造を決定して、鎖タイプ選択的な新たな認識機構を明らかにしたのに加えて、プロテアソーム分解を制御するE6-AP-RPN10複合体の立体構造解析の結果に基づいて、複合体形成の阻害を目的としたステープルペプチドの設計を行うなどの領域内共同研究も進展した。酵素の改変はやや難航しているが、機能性化合物の研究は想定よりも進んでいる面もあるので、全体的には概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Npl4は六量体ATPase Cdc48/p97の補因子であり、もう一つの補因子であるUfd1とヘテロ二量体を形成して、ユビキチン化基質を膜や複合体から引き抜く役割を担う。この反応はATPの加水分解やユビキチン鎖認識と共役しており、Npl4はユビキチン鎖認識を担う。これまでに立体構造を決定しているNpl4-K48鎖複合体では、ジユビキチンを用いているが、完全な活性化にはより長い鎖が必要であることが知られているので、トリユビキチンからペンタユビキチンまでの鎖との複合体の構造決定を目指す。計画研究1(佐伯班)との共同研究で行っているプロテアソーム関連因子E6-AP-RPN10複合体の研究については、構造情報に基づいた阻害ステープルペプチドの開発を進める。また、計画研究6(内藤班)との共同研究では、キメラ化合物SNIPERを介して結合するユビキチンリガーゼ(E3)と基質との相互作用を調べるための三者複合体の構造解析を引き続き進める。計画研究7(吉田班)との共同研究で行っている神経変性疾患に関わるE3に選択的に結合する化合物探索では、候補化合物の効果を分子間相互作用解析やE3活性測定を利用して測定し、in vitroおよびin vivoでのE3活性のモニターや薬剤としての可能性を検討する。
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Research Products
(3 results)