Planned Research
本研究では、ケモテクノロジーを駆使して、ユビキチン修飾系を理解し、操作する新たな方法論を開拓しようとしている。その中心となる技術は、UbTACsと名付けた新たなユビキチン化誘導キメラ分子である。UbTACs創製を目的に様々なE3リガーゼの新規リガンドを探索するため、独自技術である化合物アレイを活用する。2020年度は、膜タンパク質輸送を制御するユビキチンリガーゼであり、K63 鎖を特異的に形成する NEDD4 に結合するE3リガンドとして同定した1種の化合物がキメラ化合物への誘導化が可能な官能基を有することを明らかにし、モデル系のキメラ化合物として、Haloリガンドとのキメラ化合物を合成したが、ユビキチン化誘導活性は見られなかった。そこで、NEDD4全長タンパク質を用いて新たに化合物スクリーニングを実施し、5種のヒット化合物を得た。そのうちの1化合物において、NEDD4のユビキチン化活性を増強する活性を有することを見出した。また、CFTR関連E3リガーゼおよびプロテアソームサブユニットについても化合物アレイスクリーニングを実施し、ヒット化合物を得た。効率よくキメラ化する方法として、アジドとアルキンを用いたクリック法を利用し、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC6阻害剤とのキメラ化合物を合成した。その結果、本化合物によって細胞内のHDAC6が効率よく分解されることを確認した。さらにがん細胞で蓄積する代謝物アクロレインと選択的に反応するアリルアジドを利用して、がん細胞内でカルベンを中間体として生成させ、がん細胞内のタンパク質と共有結合させることに成功した。また、数万化合物のライブラリーを用いてユビキチンに特異的に結合するデコーダー分子とユビキチンとの相互作用を阻害する化合物の探索を行い、Rpn10, Rpn13, HOIL-1Lのデコーダー阻害剤候補を同定した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究では、新規のE3リガンド及び標的タンパク質リガンドを探索し、それらを組織的にキメラ化してUbTACsを創製する計画であり、そのためにはクリック反応等を利用した効率的なキメラ化技術が必要となる。そこで、研究当初からそのための基盤を構築するため、E3であるセレブロンのリガンドとして知られているサリドマイドに各種長さのリンカーを介してアジド基を導入した方法を確立した。2020年度は、その有効性を検証するため、HDAC6の酵素阻害剤とキメラ化することにより、HDAC6を分解できる新規キメラ化合物の創製に成功したので、さらにHDAC6のユビキチン結合ドメインであるZnF-UBPを利用した新たなキメラ化合物の創製に着手した。また、新たなE3リガンドの探索に関しては、NEDD4リガンドの化合物アレイによる探索、結合親和性の解析、それらの構造類縁化合物を用いて構造活性相関研究を行い、キメラ化合物への誘導化が可能なリガンドを明らかにしたが、細胞内での効果が見られなかったことから、NEDD4全長タンパク質を用いて新たにリガンド探索を行い、in vitroでNEDD4のユビキチン化活性を増強する化合物を見出している。また、CFTR関連E3リガーゼおよびプロテアソームタンパク質についても、領域内の計画班員、公募班員と共同でスクリーニングを実施し、ヒット化合物を得ている。さらに特定のタンパク質を標的とするPROTACsの概念とは異なり、がん細胞内で強くユビキチン化を誘導する方法として代謝物アクロレインを標的としたキメラ化合物の合成にも成功した。2分子蛍光補完法を用いた評価系により、ユビキチンデコーダー阻害剤探索を開始し、3種類の系で候補化合物を同定した。このように、当初の計画通り、おおむね順調に進展している。
NEDD4全長タンパク質を用いた化合物アレイスクリーニングから得られたNEDD4リガンド候補化合物の活性、特異性、有用性を検証し、有効性が確認されればキメラ化を実施する。NEDD4のユビキチン化活性を増強した化合物は、純品でなく、化学混合物であるため、活性本体の同定を試みる。さらに、CFTR関連E3リガーゼおよびプロテアソームタンパク質のリガンド候補については、タンパク質との結合活性や酵素活性への影響を評価し、リガンドの絞り込みを行なっていく。必要に応じて、新たなリガンド候補化合物の化合物アレイ法及び最新技術であるマイクロスケール熱泳動法による探索を実施する。さらに、領域内の共同研究を拡大し、新たなリガンド候補化合物の化合物アレイによる探索を実施する。得られた候補化合物については、結合解析、構造活性相関研究を行い、キメラ化するためのリガンド化合物の特定を行っていく。ユビキチン関連分子とデコーダーの結合を制御する新たな化合物の探索系として確立したGaussiaルシフェラーゼの2分子蛍光補完法を活用し、広範なスクリーニングを継続する。得られた候補化合物の容量依存性試験、特異性試験(カウンターアッセイ)を実施するとともに生理活性の検証を開始する。
All 2021 2020
All Journal Article (21 results) (of which Int'l Joint Research: 6 results, Peer Reviewed: 19 results, Open Access: 8 results) Presentation (18 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 3 results)
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