2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
18H05509
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
藤尾 慎一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30190010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 康弘 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (40264270)
清家 章 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (40303995)
木下 尚子 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (70169910)
浜田 竜彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (20840143)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 炭素14年代測定 / 同位体比分析 / DNA / 炭素寄与率 / 海洋リザーバー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
数値年代に基づいたDNAを用いて先史時代の社会や文化を復元するために、縄文時代人骨5点、弥生時代人骨2点、古墳時代人骨16点、貝塚後期時代人骨13点の炭素14年代測定と炭素・窒素同位体比分析を行った。また、貝塚後期時代の土器型式に数値年代を与えるために、貝殻集積の貝殻21点の炭素14年代を測定した。以下、時代ごとに記述する。 ① 縄文時代は九州南部最古の中期の人骨とされてきた鹿児島県出水貝塚の人骨の年代を測定したところ後期に属することがわかった。 ②弥生時代は特筆すべき成果が2点ある。まず紀元前9世紀の支石墓に葬られていた熟年女性の調査を行ったところ、典型的な縄文のDNAを持っていることがわかった。これは、在来の人びとが朝鮮半島の墓制である支石墓を採用したことを意味する。支石墓に葬られていた人びとについては長年論争があったが、確実に縄文人が採用していたことを示す証拠の一つとなった。次に紀元前6世紀に水田稲作が始まる、東海地方最古の遺跡から出土した人骨を調査したところ、紀元前6世紀の渡来系弥生人であることがわかった。これはこの地で初めて水田稲作を始めた人の中に渡来系弥生人が含まれていたことを意味する。類例の増加が必要である。 ③古墳時代の6世紀の九州南部には地下式横穴墓という独特の墓制があり、どういう人たちが葬られていたのか論争があった。とくに宮﨑平野部には渡来系の人びとの遺伝子をもつ人びとが葬られていたことはわかっていたが、えびの市などの内陸部については在来系の人びとなのかどうか、問題になっていた。今回の調査で縄文以来の遺伝子をもつ人びとが葬られていたことが明らかになった。 ④ 沖縄の貝殻集積が紀元前6世紀ごろの弥生前期中ごろ併行から造られ始めることを確認し、貝交易の開始年代をおさえることができた。これは消費地である九州北部で南海産貝輪が現れる時期と一致している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に続き、貝交易の開始年代を確認できたことや、九州西北部や東海地方における弥生時代開始期の人びとが遺伝子的にどのような人びとであったかを明らかにできたことは、これまで形質人類学的調査で言われていたことを、DNAでも裏づけるなど予想以上の成果が出た反面、弥生時代や古墳時代の親族構造解明につながりそうなデータについては、資料の遺存状況や、所蔵者との調整の難しさから足踏み状態が続いている結果となった。 まず、弥生時代だが、本研究最大の目標の一つとしていた佐賀県吉野ヶ里遺跡出土人骨の調査であるが、調査できない状態が続いている。今後も資料所蔵者である佐賀県教育委員会と協力して、調査可能な状況にもっていくことに努めたい。 次に古墳時代は、中国地方の石棺や大阪の舟形石棺にみられる複数の遺体を納める事例の調査を行った。しかし、人骨の遺存状況の違いから、同時埋葬されたすべての骨からDNAを得ることができず、親族構造の解明まで至っていない。とくに大阪府堺市野々井二本木山古墳出土人骨について、石棺に葬られた遺体がキョウダイか、夫婦か、あと一歩で明らかにできるところであったが、歯からはDNAを両方から得ることができなかった。ただ、頭骨が2体とも復元されており、DNAの遺りがよいといわれている側頭骨が遺っているため、測定対象に加えることができれば、親族構造の解明に迫ることができることがわかった。所蔵機関の理解を得て頭骨のサンプリングができれば、次のステージに進む可能性が出てきている。 以上のように、親族構造の解明にはまだ至っていないが、縄文から弥生・古墳への混血がどのように進んでいったのか、渡来系弥生人の東方への拡散過程が、時期と地域ごとに少しずつわかるようになってきたといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
弥生時代の甕棺人骨については、昨年度、佐賀県大友遺跡出土人骨を1体だけ測定したので、公募研究に採択された研究者の協力を得て、大学に保管中の甕棺出土人骨を対象とすることで、研究を加速する(研究分担者藤尾)。昨年度末に調査した広島、兵庫の古墳出土人骨の測定を行う(研究分担者清家章)。他にも新たな資料として以下のものがある。 ① 熊本大学医学部に保管中の,熊本県内出土縄文~古墳人骨約60点の悉皆調査が終了し、測定資料の前処理が終了しているので、5月より測定に出す予定である(研究分担者山田・清家・藤尾)。 ② 日本列島人の起源を解明する上で重要なルートの一つである朝鮮半島の古人骨の測定を行う。慶北大学校博物館所蔵の池山洞44号出土5世紀の人骨と、(財)ウリ文化財研究院所蔵完山洞古墳群出土の5世紀の人骨である。このうち池山洞44号と完山洞古墳群のミトコンドリアDNA分析は終了しているので、のこっている核DNAの調査と、年代測定を行う。(研究分担者清家・藤尾)。 ③ 2019年度に行った炭素14年代と同位体比分析、DNAの結果報告を、『国立歴史民俗博物館研究報告』通常号に24本、提出した。2021年3月に刊行される予定である。また、この2年間に調査したデータをもとにした論文と研究ノート、そして補足調査の結果を、10月末締切の『国立歴史民俗博物館研究報告』特集号に投稿し、2020年内の刊行を目指す。 ④ 2020年度は、5月の日本考古学協会総会、7月の鹿児島考古学会総会、11月の九州考古学会総会において、調査成果を報告することが決まっている。
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Research Products
(20 results)