2018 Fiscal Year Annual Research Report
High precision prediction of hydrogen function by advanced simulations
Project Area | HYDROGENOMICS: Creation of Innovative Materials, Devices, and Reaction Processes using Higher-Order Hydrogen Functions |
Project/Area Number |
18H05519
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常行 真司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90197749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 基之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (40370407)
濱田 幾太郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80419465)
杉野 修 東京大学, 物性研究所, 教授 (90361659)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 水素 / ハイドロジェノミクス / 高次水素機能 / 第一原理計算 / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は第一原理電子状態および分子動力学シミュレーション手法の高精度化と、データ同化技術の確立に注力した。主な成果は以下のとおりである。 1.データ同化手法は、原子座標から第一原理に基づき計算されるエネルギーに、粉末X線回折データの実験値と計算値の違いを表すペナルティ関数を適切な重みで足し合わせてハイブリッドコスト関数を定義し、このコスト関数を用いて構造シミュレーションを行う手法である。ペナルティ関数として、当初は回折角度情報だけから計算される結晶化度を用いてきたが、実験データのノイズが大きく、小さな回折ピークを観測できない場合や、結晶構造が非常に複雑な場合に対応するため、回折強度情報を利用する方法を開発し、いくつかの既知の結晶構造を用いたテスト計算により、探索の成功率が格段に高まることを検証した。 2.Pt(111)への水素吸着は、水素が複数のサイト(fcc, atop, hcp)に同時に吸着することを特徴とし、半局所近似の密度汎関数理論で研究されてきた。本研究では、より高精度な手法であるランダム位相近似の中の断熱接続揺動散逸定理を用いて、この問題を再検討し、表面の平衡格子定数,水素同位体の質量,水素の被覆率などが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 3.原子核の量子効果を取り入れた第一原理計算を可能とするソフトウェアPIMDの高度化を進め、Pd金属中における水素拡散に応用した。水素の拡散係数がPd格子定数に大きく依存することを発見した。水素と三重水素では、その質量の違いから量子拡散と熱拡散のバランスが変化して、高温と低温で異なる同位体効果が二度クロスオーバーする特異現象を理論的に解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
うまくいっている。データ同化手法の高度化と既知構造を用いたテスト計算、原子核の量子効果を取り入れる経路積分分子動力学法のソフトウェア開発、ファンデールワールス相互作用を含む第一原理計算の知見集積、乱雑位相近似に基づく精密な電子状態計算手法など、計画していたシミュレーション手法の開発が順調に進んでいる。 一方で、新学術領域内外の実験グループとの共同研究も開始されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画では、計算手法の高度化(ステージⅠ)、水素データ同化技術の本格利用と水素機能発現メカニズムの解明(ステージⅡ)、領域全体での多彩な高次水素機能の誘起に向けた理論予測(ステージⅢ)に順次取り組む。次年度は、ステージⅠの手法高精度化に加え、領域内内外との連携を通してステージII 、III への取り組みを開始する。具体的には以下の項目について研究を進める。 (1)不完全な回折実験データを利用する水素データ同化構造探索手法の、さらなる高度化・高効率化を進める。またA01班、A02班、A05-1班、領域外の研究グループと連携して、水素を含む結晶の実験データを用いた実証計算を行う。 (2)A05-1班と連携して、氷中におけるミューオンの振る舞いを第一原理計算と μSR 実験で解明する。また圧力・応力一定条件下の第一原理経路積分分子動力学法を開発し、水素結合系結晶の計算を実行する。パラジウムなど金属中の水素拡散の同位体効果を計算で解明する。水素結合分子系の量子振動スペクトル計算技術を高度化する。 (3)A04班と連携し、水素燃料電池のための水素貯蔵物質として注目を集めているギ酸の、銅表面上における吸着構造と脱水素化反応過程を、密度汎関数理論を用いたシミュレーションにより明らかにする。また電極電位の効果を有効遮蔽媒質法により取り入れた第一原理分子動力学シミュレーションを実行し、電気化学の最も基礎的な反応である水素吸着および水素発生反応のダイナミクスを明かにする。 (4)A03-2班と連携してヒドリド伝導の第一原理計算を行う。また、班内+外部連携のもとで、金(111)界面上での水の電気分解を第一原理経路積分法で調べ、プロトン移動が関わる素過程における量子トンネル効果の影響を見積もるとともに超清浄界面での最新の実験と比較し、量子効果に対する理解を深める。
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Research Products
(6 results)