2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ontogeny and phylogeny of the acquisition of time
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
18H05524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 泉 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 准教授 (80373059)
酒井 裕 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (70323376)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 比較認知科学 / 発達心理学 / 数理脳科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
こころが時間を生み出すのはなぜ、どのような仕組みによるのか、その個体発生(ヒトの生後の発達)、系統発生(生物進化)、究極要因(進化的適応と機能)の3つの視点から迫ることを目的とした。平成30年度は、大きく分類して次の3つの研究を実施した。(1)時間に関係したヒトの言語表現に関する発達研究:ヒトの幼児を対象に、自然な場面で発せられる発話データを収集した。これを解析したところ、「昨日」「今日」「明日」という時間表現は4歳―5歳にかけて発達し、初出時点では誤用が多くみられるものの、徐々に正しい用法が見についていく過程を見て取ることができた。(2)ヒトとヒト以外の動物における心的時間旅行の比較研究:これまでに確立した類人猿を対象にした視線計測の手法を用いて、様々な動画を提示した際の視線や瞳孔径を測定した。新たな試みにより、瞳孔径によって期待違反を指標化できるかどうか検証した。つまり、将来起こる出来事の期待を類人猿が持つかどうかを調べるものである。その結果、瞳孔径の収縮と拡大のパターンは提示した動画によって異なり、瞳孔径の測定によって期待違反の指標を得られることが示唆された。(3)時間に関係した心理・認知の数理モデルの検証ならびに行動特性の解明:遅延時間割引に関するタッチパネルを用いた認知課題を開発し、チンパンジーを対象にデータを得た。得られたデータを、数理モデルとの照合によって検証した。その結果、報酬の価値の時間割引が実際に生じていること、およびチンパンジーの行動は時間割引と最適採餌戦略の融合によって説明可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に記載した研究計画の主要な部分に着手し、データの収集を継続している。ヒトの言語表現に関する発達研究においては、4-5歳あたりで時間に関する理解のひとつの転換点がある見込みを得ることができた。類人猿を対象にした視線計測については研究代表者がこれまで確立した手法を継続発展的におこなっており、順調に進展している。新たに瞳孔径の測定を取り込み、研究手法として有用であることが明らかになりつつある。数理モデルと実証データの照合については、時間割引に関するタッチパネル課題で成果が上がっている。以上いずれもデータ収集が進行中であり論文として公表するには至っていないが、関連領域での論文公表は進んでいる。以上により、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
時間の獲得に関するヒトの発達研究、およびヒト以外の動物を対象にした比較研究において、データを蓄積することができている。また、アイトラッカーを用いた研究や、タッチパネルを用いた研究も、着実に成果を見込むことができ、粛々と継続する。研究計画の大きな変更が必要となる事態は生じておらず、また、研究を遂行する上での問題点もこれまでのところは存在しない。概ね当初の予定通り推進する方策である。
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