2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ontogeny and phylogeny of the acquisition of time
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
18H05524
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 裕 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (70323376)
上原 泉 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 准教授 (80373059)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
Keywords | 比較認知科学 / 発達心理学 / 数理脳科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本領域内で、時間に関するラベルづけしたコーパスデータを大量に学習することによって、自然言語処理手法であるBERTにもとづいた人工神経回路を構築中である。様々な年代が作文した文章データを入力することにより、年代や性別によって時間関係の表現に関してどのような違いがあるのか調べる計画を実行中であり、取得した作文データの形式を整えた。 乳幼児の音声リズムの認知の仕方を調べる新しい測定法を考案し、その有効性を、日本語母語乳幼児に、音節(シラブル)リズムを聞かせて検証したところ、言葉を話す前の乳児期から、音節(シラブル)リズムで区切って音声を聞いている可能性が示されるとともに、新しい測定法が有効であることが示された。 子どもの頃の経験の自伝的な記憶内容が縦断的にどう変容していくのかを分析した結果、本来忘れていた内容が後から見聞きした情報に基づき、自分の記憶であるかのように再構成して想起される(復活する)ケースや、後から見聞きした情報や類似の経験の影響を受け、本来正しく想起できていた記憶内容を変容させてしまうケースが、少ないながらもあることが確認された。しかも、記憶内容の変容や復活に伴い、その経験時期の記憶も変わりうることが示され、記憶の中の時間認識も変容されうることが示された。 チンパンジーが遅延報酬獲得後の待ち時間を考慮して行動選択を行なっていることを示した実験結果に関して、論文としてまとめ公表した。行動の結果が即座に現れない場合に遅れた結果と原因の行動を結びつける学習について、チンパンジーで実行可能な課題を考案して実施した結果、少なくとも一部のチンパンジーでは状態遷移の連鎖を用いなくても学習できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に記載した研究計画の主要な部分に着手し、データの収集を継続している。ヒトの言語表現に関する発達研究においては、特定の幼児を対象にした縦断研究により、4-5歳あたりで時間に関する理解の転換点を見て取ることができ、その知見について科学的な分析をおこなうことができた。また、本計画班の重要な役割として、領域内のA01班において構築中の人工神経回路に、様々な年代が作文した文章データを入力して時間関係の表現が年代や性別によってどの程度異なってくるのかを調べる研究が付託されているが、これに対応できるように取得した作文データの形式を整えることができた。ヒト以外の動物を対象とした研究でも、時間に関わる認知課題を設計し実施することができている。これらの成果について、論文としての公表も順次進んでいる。新型コロナ感染症拡大によって、予定したデータ収集を延期せざるを得ない事態は生じたが、繰り越しによって当初目的は達成することができている。以上により、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
時間の獲得に関するヒトを対象にした研究、およびヒト以外の動物を対象にした比較研究において、すでにデータを蓄積することができている。人工神経回路にヒトの作文データを入力する研究、ヒト以外の動物を対象にしたアイトラッカーを用いた研究ならびにタッチパネルを用いた研究のそれぞれについて、すでに手法は固まっており粛々と継続することで着実に成果を見込むことができる。新型コロナ感染症拡大によってデータ収集が困難になっている部分があるのは事実であり、当初予定したスケジュールの延期を迫られることは想定する必要があるが、研究計画の大きな変更が必要となる事態は生じておらず、新型コロナ感染症の影響を最小限に抑えるように努めたい。それ以外には、研究を遂行する上での問題点は存在しない。概ね当初予定した研究計画の通り推進する方策である。
|
Research Products
(12 results)