2021 Fiscal Year Annual Research Report
Generation and Collapse of Time Processing and its Emotional Value
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
18H05525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池谷 裕二 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (10302613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 満 昭和大学, 医学部, 名誉教授 (20161375)
藤澤 茂義 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20589395)
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90317272)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 時間 / アルツハイマー型認知症 / パーキンソン病 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
れることで、遊具のある部屋では避けてしまうような嫌悪的な空気刺激を自ら受けに行くようになることを発見した。同様な行動は、退屈を感じているヒトを対象とした心理学実験で報告があり、マウスの退屈を反映した行動であると考えらる。マウスが受動的にエアパフを受けた直後は、腹側線条体のドパミン濃度が減少したのに対し、自ら空気刺激を受けに行く直前には、エサを食べる時と同じようなドパミン濃度の増加が観察された。こうしたマウスの中には頻繁に空気刺激を受けに行く中毒状態になる個体が20%程度存在し、一度中毒状態になると、遊具のある部屋に戻しても、頻繁に空気刺激を受けに行くことがわかった。本発見は、退屈の脳内メカニズムを解明する第一歩となるだけでなく、中毒や自傷行為など退屈感が関与するとされる精神障害の治療法の開発への貢献が期待される。 冬眠のような低代謝・低体温状態においてどのように時の流れが認知されているのかを明らかにすることを目的に、冬眠様状態のマウスにおける概日時計の機能を調べた。その結果、冬眠中は神経活動が大きく抑制されているにもかかわらず概日時計は変わらぬ速さで時を刻んでいることが明らかとなった。 前年度までに脳内のヒスタミンを増加させる薬物(H3受容体拮抗薬・逆作動薬)によって失われた記憶想起が回復することを明らかにしてきたが、この種の薬物によって生体でどのように神経活動が調節されるかは不明だった。そこで嗅周皮質の多数の神経細胞の活動を同時にイメージングした結果、ヒスタミンH3受容体拮抗薬ピトリサントが、嗅周皮質の一部の神経細胞の活動、特に同期活動を上昇させることがわかった。こうした同期活動の上昇が想起回復に関与する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
適切な時間経験の感覚を持ち、時間に対して臨機応変に対処する能力は、生命の生存に必 須であり、ヒトにおいては高度な社会を築くための心理基盤になっている。しかし、時間処理の能力がどのようにして脳の中で育まれ、またそれがどのように崩壊し、しばしば疾患となるのかは未解明である。E01班では、どのように秒、分、時間、日、年といった階層的時間を経験し、どのように過去と未来とブリッジすることで現在の自己に連続性を生じさせるか、また、こうした時間処理機能がどのように情動や意思決定に影響を及ぼすかを探究することを目標として研究を進め、予定通りの優れた成果が得られた。分単位の長い時間の時間表象や、他者の時間経験の脳内表象などは、同分野でも特筆すべき知見をもたらし、さらに退屈な状態や低体温状態、不快な心理状態における時間知覚の変化、パーキンソン病や自閉スペクトラム症などの疾患や障害における時間変容を測定することにも成功し、心理的時間がどのように生成し、変動するのかの実体とメカニズムに迫ることができた。これらの実績は世界的に瞠目すべきものであり、本領域メンバーによる協働の賜である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症罹患者を対象に、新型コロナウイルス感染症に伴う後遺症と時間 認知障害との関連についての検討を完了させる。
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Research Products
(5 results)