2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
18H05528
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山縣 一夫 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (10361312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 徳子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (20359079)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞核 / 人工核 / クロマチン / ライブセルイメージング / 哺乳動物受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNAやヒストンなど特定要素(群)を用いて初期胚内に人工核を創出する再構成技術、生きたまま適時にエピゲノム編集を行う技術を開発し、それらと計測技術を組み合わせることで、初期胚核が機能性を獲得していく機序を理解することを目的とする。人工核の創出については、本年度は、昨年度に開発した実験系を用いて受精卵にDNAビーズを導入し、それを起点としてビーズ周辺に人工核が形成されるか検討した。評価には、独自に開発した蛍光ライブイメージング法と蛍光-電顕相関顕微鏡法(Live CLEM法)を用いた。その結果、導入したDNAビーズのDNAにはヌクレオソームが形成され、その周りには、天然の核と区別できないほど類似した核膜や核膜孔複合体が形成された。しかし、蛍光タンパク質と融合させた核移行シグナルを用いて、核移行能の有無を検討したところ、この「人工核」には、核移行能がないことが明らかになった。エピゲノム編集については、TALE法に加えてCRISPR/dCASシステムを用いてMajor, Minor satelliteに人為的にDNAメチル化を導入する試みを行ったが、TALE法より特異性を上げることはできなかった。マウス受精卵の発生におけるクロマチン構造変化を可視化・定量化し、その発生に対する影響を計る試みの一環として、クロマチン構造変化を蛍光ライブイメージングした単一胚を一匹の仮親の子宮に移植する実験を行い、産仔を得ることに成功した。この成功により、今後、初期胚卵割時のクロマチンや染色体動態とその後の発生における生命現象を直接結びつけて定量化することが可能となった。この結果として、卵割初期の異常な染色体分配が必ずしも不妊には帰結しないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工核の創出については、当初予定通りにマウス受精卵内で作製した人工核の正常性についてライブセルイメージングや電子顕微鏡を用いて解析をすすめた。その結果、人工核は内部にヌクレオソーム構造をもち、その周囲には核膜や核膜孔複合体をもつことを明らかにした。核移行活性や転写活性を持つ人工核の創出には至らなかったが、ここまでの成果をまとめて論文発表することができた。本成果は「生きた受精卵内で人工細胞構造の構築に成功」という見出しで、複数のニュース番組や新聞記事などに取り上げられた。エピゲノム編集については、現時点でCRISPR/dCASシステムを用いた方法においてTALE法ほどの配列特異的なDNAメチル化導入を実現することができていない。現在、DNA結合モジュールの改良に加えて、DNAメチル化酵素の各種変異体を用いて特異性や活性を制御する試みを進めている。さらに受精卵だけでなく、ES細胞においても同様の成果が得られるかの検討を行っている。本年度はこれら成果に加えて、染色体動態を個別胚ごとに定量化し、それらと発生能を直接結びつける方法論を開発し、論文化した。この成果で得られた知見や方法論は人工核創出やエピゲノム編集プロジェクトの今後の発展に十分に寄与するものである。以上から、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)人工核の創出:核移行活性を持ち転写を行う「完全な」人工核の創出を目指す。ビーズ上のDNAのプロモーター配列や長さ、DNA形状(直鎖状から環状)などを検討する。ヒト体細胞に関しては、ヌクレオソームビーズの利用や特定のタンパク質(核移行に重要なRanやRCC1など)を結合させた人工ビーズを導入し、人工核形成の有無を検討する。転写の確認は、木村(宏)計画研究が開発するリン酸化RNA polymerase IIを生きた細胞で可視化できる方法を使う。胡桃坂計画研究と連携してヌクレオソームを付加したビーズを作製し、核移行活性や転写活性への影響を調べる。 (2)エピゲノム編集:セントロメアやセントロメア周辺領域に人為的にDNAメチル化を導入したマウス受精卵に対して、その後の発生に対する影響を検討する。また、この手法をES細胞の系に応用し、それらの分化・増殖への影響を解析する。昨年度までの結果では、CRISPR法を用いたメチル化導入は、これまでのTALE法に比べて特異性が低かった。今後は、融合するメチル化転移酵素の各種変異体を検討することで、特異性やメチル化強度の最適化を図る。最適条件を使って、MajorやMinor satellite配列以外に染色体上に均一に存在しているリピート配列(LINEやIAP)や目的の単一遺伝子座に対して、DNAメチル化の導入を試みる。 (3)クロマチン計測・定量化:上記に加えて、今後はより精度よくかつ長期間にわたってクロマチン状態を定量化できるイメージング技術を開発する。それにより、初期胚に見られる個々のゆらぎと細胞分化、さらにその発生能との連関性について定量化を試みる。超解像ライブセルイメージングに関しては、引き続き各種条件下での受精卵・胚の長時間イメージングを行い、その胚移植を行うことで、細胞に対してできる限り低侵襲な系を確立する。
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Research Products
(66 results)