2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
18H05528
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山縣 一夫 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10361312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 徳子 大阪大学, 生命機能研究科, 特任教授 (20359079)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞核 / 人工核 / クロマチン / ライブセルイメージング / 哺乳動物受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)DNAなど特定要素(群)を用いて初期胚内に人工核を創出する再構成技術、(2)受精卵において特異的な領域にエピゲノム編集を行う技術を開発し、それらと(3)超解像イメージングなどの計測技術を組み合わせることで、初期胚核が機能性を獲得していく機序を理解することを目的とする。 (1)人工核の創出:当該年度は、導入する要素を検討した結果、長鎖DNA(約166 kbp)を発生開始直後の卵子に導入することで、核移行活性を持つ人工核の作製に成功した。この人工核は核小体様構造を有しており、明視野レベルでは天然核と酷似していた(Yonezawa et al., in prep)。体細胞で人工核を創出する目的で、培養細胞にプラスミドDNAを導入したところ、DNA塊周辺には核膜孔のない“牢屋”核膜が形成され、その疑似核は転写不活性であった(Haraguchi et al., Commun Biol, 2022)。 (2)エピゲノム編集:卵子において染色体セントロメア領域のminor satellite配列に人為的にDNAメチル化を導入した場合、第1および第2減数分裂には影響はないが、受精後4細胞期付近で発生が顕著に停止し、特にG2期が遅延・停止していることがわかった(Yamazaki et al., in prep)。 (3)クロマチン計測:当該年度報告した低侵襲性の超解像ライブセルイメージング(Hatano et al., Genes to Cells, 2022)を用いて転写におけるRNA polymerase IIのリン酸化状況を生きたまま観察することに成功した。また、この技術を応用し、培養環境の変化が分裂速度に与える影響の定量化を行い、現在論文投稿中である(Mashiko et al., under revision; Yao et al., submitted)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)人工核の創出:これまで予定通りにマウス受精卵内で人工核を作製し、その正常性についてライブセルイメージングや電子顕微鏡を用いた解析をすすめ、派生した成果を含めて複数論文化した。当該年度は、核移行活性を持つ人工核の創出に成功し、学会や研究会で発表しており、本年度中の論文発表を目指す。 (2)エピゲノム編集:これまでにTALE法を用いたmajor satelliteへのDNAメチル化導入に成功し論文化した。現在、それをminor satelliteにも応用し、受精卵に加えて未成熟卵子やES細胞での導入にも成功している。現在、本年度中の論文投稿を見据えて、生殖細胞におけるセントロメア低DNAメチル化に関する分子メカニズムや生物学的意義について最終的な検討を行っている。一方、当初予定だったCRISPR/dCASシステムを用いた方法ではオフターゲットが見られ、配列特異的なDNAメチル化導入を実現することができていない。 (3)クロマチン計測:当該年度までに低侵襲な超解像ライブセルイメージングの開発をすすめ、それを用いてマウス受精卵の染色体を生きたまま観察し、その本数や構造を測定することに成功、論文発表を行った。本年度はこの系を応用し、木村宏計画研究の開発したRNA polymerase II mintbodyの系を用いて、受精卵における遺伝子転写を生きたまま観察・計測する試みを行っている。さらに、ここで開発された測定技術を応用し、ヒト胚やウシ胚の分裂速度の測定や、培養環境の変化がそれに与える影響の定量化を行い、現在複数論文投稿中である。 以上から、人工核やエピゲノム編集に関しては当該年度では論文準備中の段階であるものの投稿直前であり、クロマチン計測に関しては論文発表済みないしは投稿中であることから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下、(1)人工核の創出、(2)エピゲノム編集、(3)クロマチン計測に関して、項目ごとに進捗と実施計画を述べる (1)人工核の創出:当該年度はスタート物質にT4 phage DNA等の長鎖DNAを用いることで受精卵内に核移行活性を持つ人工核を構築できた。そこで本年度は電子顕微鏡解析などの核構造に関する詳細なデータを加えてその成果を論文化することと並行し、OriCiro Genomics社の技術などを用いて転写ユニットやセントロメアサテライト配列を持つ長鎖DNAを合成し、転写や複製・分配を行う完全な人工核の創出を目指す。転写能の検討には、木村宏計画研究が開発したリン酸化RNA polymerase IIの可視化技術や、蛍光モルフォリノRNA技術などを、(3)で開発した低侵襲の超解像イメージングを用いて計測する。これら方法によって人工核において転写が見られたら、時期特異的プロモーターなどにDNAを変更し、それへの転写因子の結合や、そのエピジェネティック状況の違いなどを経時的に測定することで、初期胚における核の機能性獲得機序の理解につなげる。 (2)エピゲノム編集:上述の通り、すでにマウス受精卵において染色体セントロメアに存在するmajorおよびminor satellite配列特異的に人為的にDNAメチル化を導入することに成功している。本年度は、これら技術と(1)を組み合わせ、受精卵人工細胞核中の特定のCpGサイトにDNAメチル化を導入し、その転写への影響を(3)の手法で計測する。また、生殖細胞特異的なセントロメア領域低DNAメチル化に関する分子メカニズムや生物学的意義について、さらに検討を進める。 (3)クロマチン計測:当該年度までに開発した低侵襲性の超解像ライブセルイメージングを応用し、本年度は上記で検討する人工細胞核やエピゲノム編集後の細胞核・人工核の観察・計測を行う。
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Remarks |
https://www.nature.com/articles/s41588-022-01023-0
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Research Products
(32 results)