2019 Fiscal Year Annual Research Report
減数分裂における細胞核・クロマチン構造の変換メカニズム
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
18H05533
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平岡 泰 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10359078)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | クロマチン / 減数分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母をモデルとして、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものとして、(1)核膜との相互作用、(2)非コードRNAとの相互作用、(3)ヒストン修飾について解析を行った。 (1)核膜との相互作用、:Lem2とBqt4の二重欠損株は致死となるが、この株では核タンパク質が核外に漏出し、この漏出が致死の原因であることを明らかにし、Lem2とBqt4が核膜のバリア機能の維持に重要であることを明らかにした。また、この致死性を相補するものとして、分裂酵母の核膜に局在するElo2タンパク質を発見した。分裂酵母においてElo2を欠損すると致死となるが、この致死性をヒトElo2ホモログが相補することから、Elo2の機能が種を越えて保存されていることを示した (Kinuagsa et al, J Cell Sci 2019)。 (2)非コードRNAとの相互作用、:これまで報告していたsme2 RNAに加え、クロマチンに蓄積する新たな非コードRNAおよびRNA結合タンパク質を同定した(Ding et al, Nat Commun 2019)。また、数理物理学との分野融合によりコンピュータシミュレーションを行い、相同染色体対合過程の数理モデルを構築した(Takao et al, J Phys Soc Jap 2019)。 (3)ヒストン修飾:分裂酵母の2つのヒストンH2A遺伝子の1つを欠損すると、染色体末端のリボソームRNAリピート配列が絡まって、染色体分離異常を起こすことを明らかにした(Yamamoto et al, Sci Rep 2019)。また、ヒストンH2Aのユビキチン化がヒストンシャペロンとの相互作用を介してクロマチン上へのヒストンローディングを制御することがわかった(Murawska et al, Mol Cell 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの項目、(1)核膜、(2)非コードRNA、(3)ヒストン修飾について、論文に至る成果をあげることができた。 (1)Lem2・Lnp1欠損が核タンパク質の漏出を起こすことから、Lem2とBqt4が核膜のバリア機能の維持に果たす役割を明らかにした。さらに、その役割を核膜に局在するElo2が相補する仕組みを明らかにし、論文の発表に至った。 (2)非コードRNAをクロマチンに蓄積させる一群のタンパク質を同定し、この一群のタンパク質と非コードRNAがクロマチン上に蓄積することで液相分離を起こすことにより、クロマチンの相同領域をたぐり寄せるという新しいモデルを提唱することができ、論文の発表に至った。 (3)ヒストン修飾・バリアントや量的制御が染色体分離に与える影響について明らかにし、論文の発表に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)核膜:Lem2およびBqt4の欠損株の遺伝子発現をDNAマイクロアレイで計測することにより、Lem2やBqt4がクロマチンポテンシャルの形成に与える影響を解析する。さらにLem2およびBqt4と相互作用するタンパク質を生化学的に同定する。また、核膜タンパク質Lem2とERタンパク質Lnp1の二重欠損が合成的生育不全を起こすことがわかったので、これを相補する因子の探索を行う。これらの解析から、分裂酵母のゲノム安定性に影響を与える核膜およびER膜タンパク質を絞り込み、遺伝子解析を行うとともに、DNAマイクロアレイで遺伝子発現を計測する。また、Lem2やBqt4と結合するクロマチン領域をChIP-seqで特定し、その領域での遺伝子発現と核内配置を比較する。 (2)非コードRNA:非コードRNAとRNA結合タンパク質はクロマチン上に複合体を形成し、液相分離を起こすと考えられるが、この現象の物理化学的根拠を得るために、溶液内での物性を計測する。さらに、得られた物理化学パラメーターに基づき、コンピュータシミュレーションによる理論モデルを構築する。 (3)ヒストン修飾:ヒストンH4のリシンのアセチル化がクロマチン構造に与える影響を生化学解析と遺伝子解析の両面から検定する。そのために、これらのリシンをアルギニンに置換した変異株を作成し、体細胞分裂と減数分裂でのクロマチン機能への影響や、薬剤感受性の違いを解析する。またアセチル化ヒストンH4と相互作用する因子の生化学的探索およびゲノムライブラリー探索を引き続き行い、得られた候補タンパク質の局在解析を行うとともに、遺伝子破壊などにより、体細胞分裂と減数分裂でのクロマチン機能への影響や、DNA複製やDNA損傷修復チェックポイント阻害剤などに対する感受性の違いを解析する。また、ゲノム上でのヌクレオソーム分布を体細胞分裂と減数分裂で計測する。
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Research Products
(30 results)