2020 Fiscal Year Annual Research Report
減数分裂における細胞核・クロマチン構造の変換メカニズム
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
18H05533
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平岡 泰 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10359078)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
Keywords | クロマチン / 減数分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母をモデルとして、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものとして、(1)核膜との相互作用、(2)非コードRNAとの相互作用、(3)ヒストン修飾について解析を行った。 (1)核膜との相互作用:これまでの研究により、Lem2とBqt4の二重欠損株は致死となるが、この株では核タンパク質が核外に漏出し、この漏出が致死の原因であることを明らかにし、Lem2とBqt4が核膜のバリア機能の維持に重要であることを明らかにしている。さらに、Lem2との二重欠損により致死性となる因子として、分裂酵母の小胞体に局在するLnp1タンパク質を発見した。分子遺伝学的な解析と蛍光イメージングを使って、Lem2とLnp1の両者が共働して核膜と小胞体との境界を形成していることを発見した(Hirano et al, Commun Biol 2020)。また、核膜の一過的な破裂が、プロテアソームを構成するRpn11タンパク質を介して、減数分裂後の胞子形成に重要な働きをすることを発見した(Yang et al, J. Fungi 2020)。 (2)非コードRNAとの相互作用:非コードRNAとRNA結合タンパク質との相互作用が起こす相分離が、相同染色体対合に重要な働きをすることを明らかにした(Hiraoka Curr Genet 2020)。また、相同染色体対合に重要な働きをするタンパク質の精製法を確立した(Yuzurihara et al, Protein J 2010)。 (3)ヒストン修飾:分裂酵母のヒストンH2A.Z遺伝子を欠損しても、正常な減数分裂に必要な染色体クロスオーバーができることを報告し、その分子機構を明らかにした (Yamada et al, Gene 2020)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの項目、(1)核膜、(2)非コードRNA、(3)ヒストン修飾について、論文に至る成果をあげることができた。 (1)核膜タンパク質であるLem2と、小胞体膜に存在するLnp1が協働して、核膜と小胞体膜との境界を形成することを明らかにし、論文の発表に至った。正常な核膜の維持は、クロマチン機能の維持に重要であり、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものである。Lem2とLnp1は、ヒトを含む広汎な種で保存されているため、ヒトでも同様の働きがある可能性があり、今後の展開に道を拓いた。 (2)非コードRNAとこの非コードRNAに結合するタンパク質の相互作用によって相分離が起こり、クロマチンの相同領域を対合させることを示し、論文の発表に至った。 (3)ヒストンバリアントであるH2A.Zの染色体クロスオーバーに与える影響について明らかにし、論文の発表に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)核膜:核膜タンパク質Lem2とBqt4の二重欠損が合成致死になることが、これまでの解析から分かっている。それを相補する因子を検索し、いくつかの候補因子を同定している。その因子に関して、遺伝学的な解析と蛍光イメージング解析を行い、ゲノムの安定性やクロマチンポテンシャルに影響を与える因子とその原因を検討する。Lem2やBqt4と結合するクロマチン領域をChIP-seqで特定し、その領域での遺伝子発現と核内配置を比較する。また、核膜タンパク質Lem2と小胞体膜タンパク質Lnp1の二重欠損が合成的生育不全を相補する因子についても、同様の解析を行い、分裂酵母のゲノム安定性に影響を与える核膜およびER膜タンパク質を同定する。 (2)非コードRNA:非コードRNAとRNA結合タンパク質の結合を試験管内で再構築する実験系を作り、液相分離を起こす条件を検討する。その際に、クロマチンが果たす役割についても、再構成系で検討する。 (3)ヒストン修飾:昨年度に引き続き、ヒストンH4のリシンのアセチル化がクロマチン構造に与える影響を生化学解析と遺伝子解析の両面から検定する。すでに、これらのリシンをアルギニンに置換した変異株を作製済みである。この変異細胞株を用いて、体細胞分裂と減数分裂でのクロマチン機能への影響や、薬剤感受性の違いを解析する。またアセチル化ヒストンH4と相互作用する因子の生化学的探索およびゲノムライブラリー探索を引き続き行い、得られた候補タンパク質の局在解析を行うとともに、遺伝子破壊などにより、体細胞分裂と減数分裂でのクロマチン機能への影響や、DNA複製やDNA損傷修復チェックポイント阻害剤などに対する感受性の違いを解析する。また、ゲノム上でのヌクレオソーム分布を体細胞分裂と減数分裂で計測する。
|
Research Products
(20 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Asymmetrical localization of outer ring nucleoporins within the nuclear pore complex in fission yeast2020
Author(s)
Asakawa H, Kojidani T, Matsuda A, Yang H-J, Ohtsuki C, Osakada H, Iwamoto M, Chikashige Y, Nagao K, Obuse C, Hiraoka Y, Haraguchi T.
Organizer
第43回日本分子生物学会年会
Invited
-
-
-
-
-