2021 Fiscal Year Annual Research Report
減数分裂における細胞核・クロマチン構造の変換メカニズム
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
18H05533
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平岡 泰 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10359078)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | クロマチン / 減数分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母をモデルとして、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものとして、(1)核膜との相互作用、(2)非コードRNAとの相互作用、(3)ヒストン修飾について解析を行った。 (1)核膜との相互作用:分裂酵母の核膜タンパク質Lem2の欠損と合成致死になるものとして、別の核膜タンパク質Bqt4を同定していたが、このBqt4タンパク質はBqt3タンパク質が欠損すると分解されることを明らかにした(Toanら、日本分子生物学会)。また、Lem2とBqt4の二重欠損の合成致死を相補する因子として、新たにセラミド合成酵素を同定した(平野泰弘ら、未発表)。これらのことから、核膜の継続的な補修がクロマチンポテンシャルの維持に重要であることがわかった。 (2)非コードRNAとの相互作用:染色体上のRNAタンパク質複合体も相分離により、クロマチン相同領域を対合させることを報告した(Hiraoka, Curr Genet 2021)。一方、非コードRNA領域の対合にも減数分裂コヒーシンRec8が必要であり、Rec8が作るクロマチン軸が相同染色体の対合に関与することがわかった (Sakuno et al, Nucleic Acids Res 2022)。 (3)ヒストン修飾:DNA複製の開始には MCM複合体のクロマチンへのローディングが必要であるが、この過程に、ヒストンH4K20のメチル化レベルが重要な役割を果たすことを明らかにし、ヒストン修飾がクロマチンポテンシャルの形成に重要であることを示した。この成果は論文として報告した(Hayashi-Takanaka et al, Nucleic Acids Res 2021)。また、分裂酵母テロメア近傍のクロマチン凝縮とヒストン修飾の関係について総説を発表した (Yadav et al, Microorganisms 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核膜、非コードRNA、ヒストン修飾の3つの項目について、学会発表および論文発表に至る成果をあげることができた。 (1)核膜タンパク質であるBqt4は別の核膜タンパク質 Bqt3 が欠損すると分解されることを発見し、その仕組みとしてプロテアソーム分解系が働くことを見出し、学会で口頭発表に選ばれた。 (2)非コードRNAとこの非コードRNAに結合するタンパク質の相互作用によって相分離が起こり、クロマチンの相同領域を対合させることを示し、論文の発表に至った。非コードRNA領域の対合にも減数分裂コヒーシンRec8が必要であり、Rec8が作るクロマチン軸が相同染色体の対合に関与することを明らかにし、論文発表に至った。 (3)ヒストンH4のアセチル化がDNA複製の開始のために必要なクロマチンポテンシャルを形成することを示し、論文の発表に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、核膜との相互作用とヒストン修飾に注目し、これらがクロマチンを制御するメカニズムを明らかにする。 核膜との相互作用については、Lem2とBqt4の二重欠損の増殖不全を相補する因子として、すでに すでに同定していた極長鎖脂肪酸伸長酵素に加え、セラミド合成酵素を同定したが、まだ発表に至っていないので、これを論文として報告する。また、テロメアを核膜につなぎ留める因子であるBqt4が、Bqt3欠損時に分解される仕組みが未解明であり、これの解明に努める。Bqt4分解の仕組みとして、ユビキチン付加酵素やプロテアソーム分解系を想定し、これらの候補タンパク質の欠損によってBqt4分解を回避するものを検索する。候補タンパク質をコードする遺伝子を破壊または改変し、作成したさまざまな変異株に対して、Bqt4の局在や安定性および核形態に対する影響を生細胞蛍光イメージング法により解析する。また、ストレス応答に関与する核膜タンパク質として2つの核膜タンパク質を見つけており、これらのタンパク質の核膜機能およびストレス応答における役割を解析する。核膜の状態を観察するために、生細胞蛍光イメージング法に加え、必要に応じて電子顕微鏡を用いる。これらの解析により、核膜がゲノム安定性に果たす役割を明らかにする。 ヒストン修飾については、ヒストンH4のリジンをアルギニンに置換した変異株が薬剤感受性を示すことから、ヒストンH4のリジンのアセチル化が関与すると思われる。ヒストンH4のリジンのアセチル化がDNA複製や細胞増殖に与える影響を明らかにする。
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Research Products
(20 results)