2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of in vitro oogenesis with high integrity
Project Area | Ensuring integrity in gametogenesis |
Project/Area Number |
18H05547
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
尾畑 やよい 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (70312907)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 卵子 / 卵子形成 / 発生能 / 卵胞形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)卵子形成過程解析ツールの構築:卵子における簡便な遺伝子機能喪失方法を構築する目的で行った。マウス卵子形成過程で高発現するZp3遺伝子のイントロンに人工的に設計したマイクロRNA(amiRNA)を挿入し、標的遺伝子のノックダウン(KD)を試みた。その結果、標的タンパク質の消失が確認できた。また、雄で系統を維持でき、標的遺伝子に対するamiRNAを連結すると、複数の遺伝子を同時にKDできることも確認した。 2)in vitroで産生された卵子の脆弱性の原因解明:in vitroおよび生体内で産生された卵子を材料として、シングルセルRNA-seq解析を行った。階層的クラスタリング解析の結果、 in vitroおよび生体内で産生された卵子の遺伝子発現プロファイルは明確に二分された。また、in vitro由来卵子では、母性mRNAが早く分解され、胚性mRNAの転写が早く起きていた。 3)in vitroで産生された卵子の発生能の非破壊的予見:in vitro由来卵子の発生能とCRIF法で解析取得したデータとの間に相関が認めらるか否か解析した。特定の波長に対して発せられる自家蛍光の強度と胚盤胞発生率との間に相関が示唆された。 4)卵胞形成機構の理解:エストロジェンの卵胞形成阻害機構を明らかにする目的で、エストロジェンによって過剰発現誘導される因子のプロモーター領域における、エストロジェン受容体ChIP解析を行った。その結果、in vitroで培養した卵巣では、生体内由来卵巣より、あるsiteでエストロジェン受容体が濃縮されていることが明らかとなった。エストロジェンによって過剰発現誘導される本因子を血清不含培地に添加すると、卵胞形成は阻害されることも明らかとなった。以上より、エストロジェンによって活性化された本因子がin vitroにおける卵胞形成阻害の一因であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度、本研究課題のin vitroシステムで用いる培養器材が世界的に不足し、納品に半年を要した。他の器材についても検討したが代替は不可能であった。そのため、培養条件の検討は予定通りには進展しなかった。また、2020年に入ってからは、中国で製造販売されるELISAキットなど、多くの試薬の入手が困難となり、予定通りには進展しなかった実験があった。そこで、卵子の分子生物学的な解析に傾注して解析を進めた。卵子形成過程における遺伝子機能喪失・機能補完法は確立されつつあり、これらのツールは、今後、卵子の発生支持能を左右する候補因子の機能解析にも活用していけると期待している。また、RNA-seq解析では、in vitro由来卵子でいくつかの興味深い異常が認められた。検証の結果、この異常は、遺伝子レベルのみならず、タンパク質や化学物質など物質的なレベルでも検出されたことから、確度の高い結果であったと考えている。卵胞形成機構の理解については、2018年度および2019年度の研究により、in vitroにおける卵胞形成異常の原因と生体内で正常な卵胞形成を保証するメカニズムが明らかになった。この研究成果については、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)卵子形成過程解析ツールの構築:今後は、従来法のノックアウトマウスの卵子とamiRNAによるKDマウスの卵子の表現型やトランスクリプトームを比較することで、卵子における遺伝子の機能喪失に最適なツールを構築する。 2)in vitroで産生された卵子の脆弱性の原因解明:2019年度に明らかにされたin vitro由来卵子における異常なタンパク質の発現や化学物質の存在が、受精後の発生に影響するか否か、パスウェイの阻害剤や亢進剤などを利用しながらin vitro系で検証していく。 3)in vitroで産生された卵子の発生能の非破壊的予見:CRIF法で特定の波長に対して発せられる自家蛍光の強度と胚盤胞発生率との間に相関が示唆されたため、強度によってソーティングした卵子の個体発生能を検証する。また、細胞小器官のライブイメージング用プローブなどを用いて、得られた画像を解析し、発生能解析の結果と紐付けすることで、非破壊的に発生能を予見するための技術を構築していく。 4)in vitro卵子産生系のリノベーション:FBS添加培地の過不足や卵子形成に有効な因子の同定に役立てるために、化学的組成の明らかな培地(CDM)を確立していく。2019年度までに検討したCDMでは、マウス胎仔卵巣の器官培養によりin vitroで卵胞形成が可能となったが、卵胞の顆粒膜細胞層は依然として薄い。これまでサイトカインやホルモンの添加は一切行われていない。そこで今後は、CDMにサイトカインやホルモンなどを添加した影響を評価し、卵胞形成や卵胞成長のために必要な因子の同定と至適CDMの構築を目指していく。得られた卵巣培養用のCDMをもとに、卵胞培養用のCDMについても検討していく。
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Remarks |
HPについては改定に向けて鋭意努力している。
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Research Products
(9 results)