2021 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of in vitro oogenesis with high integrity
Project Area | Ensuring integrity in gametogenesis |
Project/Area Number |
18H05547
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
尾畑 やよい 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (70312907)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 卵子 / 卵子形成過程 / 発生能 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内に匹敵する“高インテグリティを実現するin vitro卵子産生系”を構築することを最終目標として、2021年度は以下の研究を実施した。 1)卵母細胞のRNA-seq解析および生理学的特徴の解析 RNA-seq解析でin vitro由来卵でセラミドの代謝経路が過剰に活性化している可能性が示唆された。そこで、卵内のセラミドを定量した結果、in vitro由来卵ではin vivo由来卵のおよそ2倍のセラミドを含有することが示された。過剰なセラミドは細胞内でdeath signalとして働きミトコンドリア損傷をもたらすことが報告されている。このことは、in vitro由来卵のミトコンドリア膜電位がin vivo由来卵よりも有意に低いことと一致した。一方、これまで定法としてきた通常酸素条件(20%酸素)で産生した卵に比べて低酸素条件(7%酸素)で産生した卵は高い発生支持能を有することが明らかとなった。低酸素条件で産生した卵では、セラミド含量がin vivo由来卵と同程度まで下方修正され、ミトコンドリア膜電位の回復も認められた。また、低酸素条件で産生した卵の遺伝子発現プロファイルは、階層的クラスタリング解析では、依然としてin vivo由来卵とは異なる集団を形成したが、ごく一部の卵がin vivo由来卵と同一の集団に分類された。これらの卵では、Noboxとよばれる転写因子の発現が回復しており、Noboxの発現量と高い相関を示す遺伝子の多くは卵形成に不可欠な因子であることが示された。 2)in vitro卵子産生系のためのChemically Defined Medium (CDM) の検討 新しい培養デバイスが再び製造停止となり、再度デバイスの検討を余儀なくされた。その結果、CDMを用いたマウス胎仔卵巣の培養により、血清添加培地と同程度の二次卵胞が形成される系が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、本研究で用いる培養デバイスが販売停止となり、代替デバイスを検討し確立した矢先に、再び当該デバイスが販売停止となった。これまでと全く同様ではないが、再度となる代替デバイスの選定も概ね完了し、培養系がworkすることは検証済みである。 一方、卵の分子生物学的な解析が進展した。卵子形成過程におけるレトロトランスポゾンの抑制機構が精子形成過程とは異なることを見出し、論文掲載に至った。さらに、卵のRNA-seq解析、生理学的解析およびリピドミクス解析により、in vitro卵の異常を明らかにし、インテグリティ低下の要因となる候補因子の抽出に至った。これらの研究成果も論文掲載に至った。また、in vitroにおける卵の産生系として、酸素条件および高分子化合物として添加しているPolyvinylpyrrolidoneの分子量の至適条件を検討し、これらの結果も論文掲載に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることを踏まえ、これまでの研究結果を集約していく。そのための推進方策は以下の通りである。 1)in vitro卵子形成で遺伝子の機能補完を実施し、不妊雌マウスの卵巣から卵を産生し産仔を得ることで、in vitro系のロバストネスを示す。 2)生体由来の未授精卵および二次卵胞の成長・成熟培養で産生された未授精卵それぞれをConfocal reflection microscopy-assisted single-cell innate fluorescence analysis(CRIF法)に供試し、細胞小器官の情報、自家蛍光パターンの情報、受精能および発生能を機械学習し、発生支持能を非破壊的に予見するための情報を集積していくことで、非破壊的に発生能を予見するための新しい技術を構築する。 3)これまでにマウス胎仔卵巣のCDMによる器官培養と10日齢マウス二次卵胞のCDMによる卵胞培養をそれぞれ個別に検討してきた。リコンビナントタンパク質、ミネラル、脂質、高分子化合物などの添加により、前者では二次卵胞が、後者では成熟卵子を分化させることが可能となった。これまでのRNA-seq解析の結果などを踏まえ、培地への添加物をさらに検討し、今年度はCDMにより器官培養と卵胞培養でマウス胎仔PGCから成熟卵子を産生する。また、確立したCDMの結果をもとに卵子形成に寄与する物質的な基盤を総括する。
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Research Products
(7 results)