2019 Fiscal Year Annual Research Report
組織学的情報とリンクした単一細胞遺伝子発現プロファイル動態の解明
Project Area | Ensuring integrity in gametogenesis |
Project/Area Number |
18H05553
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
栗本 一基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20415152)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 単一細胞 / Single cell / 1細胞 / RNAseq / トランスクリプトーム / レーザーマイクロダイセクション / 組織学 / LCM |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年~令和元年度は、凍結組織切片からの定量的単一細胞遺伝子発現を可能にする手法を開発するための方法論の開発を行った。この手法の開発においては、凍結組織切片から細胞を切り出すことによる情報の損失やバイアス(主にmRNAの分解や、細胞からのRNA抽出効率に起因すると考えられる)を定量的に評価する必要がある。組織中の細胞は、血管との位置関係による物質の濃度など化学的環境、臓器や組織内での位置等による力学的環境の多様性により、本質的に不均一である。このため、切り出した細胞の遺伝子発現も原理的に不均一であり、そのバラツキから、方法論に起因する成分を抽出することは困難である。したがって本研究では均一な遺伝子発現を期待できる培養細胞(2iLIF存在下で培養したES細胞)を適切な包埋剤に懸濁して、液体窒素で瞬間凍結し、凍結組織ブロックの代替物となる凍結セルブロックを作出、そこから凍結ミクロトームを用いて切片を作り、レーザーマイクロダイセクション(LCM)で細胞を切り出し、cDNA増幅の検討を行っている。一方、このセルブロック作出の前の細胞を、凍結させずに生きたまま採取してcDNA増幅を行い、コントロールとして用いる。このことにより、均一な細胞集団に由来する疑似的な組織切片からLCMで細胞を採取した場合に、どのようなバラツキやバイアスが生じるかを正確に評価することが出来ると考えられる。本年度は、この実験系を用いて方法論の検討を行った。試行錯誤の末、溶出効率を劇的に改善する条件を発見し、生の細胞に近い効率でのcDNA増幅に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切片からの単一細胞遺伝子発現解析手法の開発における主要なボトルネックである、切片から採取した固定・乾燥した細胞からのRNAの可溶化において劇的な進展が見られ、生細胞に近い効率でのcDNA増幅を行うことができる可能性を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
切片からの定量的な解析に必要なcDNA増幅法の開発を引き続き進める。可溶化条件がまだ完全には安定していないので、定量的な意味で安定した再現性(何度やっても、実験の間隔をあけても、まったく同じように系が動く)を実現するべく条件検討を進める。現時点ではコントロール実験系(培養細胞のセルブロック)を用いて検討しているが、cDNA増幅の精度や安定性が確実なものとなったら、実際の切片(マウス卵巣)を用いて生殖細胞発生過程に適用できるかどうかを検討する。次世代シークエンサーを用いたゲノムワイドな発現を検証して方法論の論文化を急ぐ。
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